サトタカ

FARGO/ファーゴ シーズン5のサトタカのネタバレレビュー・内容・結末

FARGO/ファーゴ シーズン5(2023年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『ファーゴ』は基本路線としてブラック・ユーモアを交えながらフェミニズム(女性尊重主義、男女同権主義)を訴えるドラマなので、女性差別男とそれをやり込めるやたら強い女性が出てくる。

今回は保安官で牧場主、MAGA(Make America Great Again=トランプ支持者)のロイ・ティルマン(ジョン・ハム)が女性差別&DV野郎として登場。「Toxic Masculinity(トキシック・マスキュリニティ)」いわゆる「有害な男らしさ(男性性)」の化身だ。FBIがなんぼのもんじゃという俺様保安官ぶりで頭も切れ、口も立つ。

やたら強いのは主人公のドロシー・ライオン(ジュノー・テンプル)と、ドロシーの義母ロレイン・ライオン(ジェニファー・ジェイソン・リー)。ドロシーは華奢で小柄なのに猛禽類みたいな鋭い眼光で笑っちゃうほど強い。ロレインはもう「姉御!」っていうヤクザの女親分みたいな感じでクールでしたわ。ジェニファー・ジェイソン・リーって『ルームメイト(1992)』のヘドラっていうサイコ女性を演じてた女優さんなのね、全然わからなかった!脱力したような話し方がカッコいい。

ロイの息子、保安官代理のゲイター(ジョー・キーリー)もよかった。弱さを持っていて、どこかで救いを求めているキャラクター。父親に認められたくていきがってるけど、利己的かつ無能というところが切ない。ジョー・キーリーは『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のスティーブ役のイメージが強いもんで、序盤はクソ野郎でも後半は実はいいやつかと期待したんだけど…。

インド系の保安官代理インディラ・オルムステッド(リチャ・ムールジャニ)も強い女性キャラ。ただ彼女のだんながもうほんとにダメないつまでも夢見がちなプロゴルファーの卵ちゃんで「○○な妻がほしい!」と妻に語り出すシークエンスは、もう見事なまでのクソ主張でテレビに向かって拍手しちゃいましたよ。一周回って好き。

我々は、ひとしく神の恵みに対しての債務者であるというキリスト教的な考え方がある。そこまで壮大でなくても、他人から助けてもらったり借金したりといった「借り」とどう向き合うか、どうやってその「借り」を返すのか、そして「借り」の恩赦があってもいいのではないかといったあたりもテーマだった。最終話でドロシーはオル・マンチ(前髪おかっぱでスカート姿の変人殺し屋)を赦していた。ファーゴにしてはめずらしくソフトなオチで意外に感じた。


FBIのマイヤー捜査官(ジェシカ・ポーリー)は出番は少なめながら、中性的な見た目と、呆れたような表情が魅力的でした。もっと活躍してほしかった。
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