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FARGO/ファーゴ シーズン5のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

FARGO/ファーゴ シーズン5(2023年製作のドラマ)
4.4
♪前置き
とうとう本作で、現在観れるファーゴシリーズを観終えた。私は多忙な中でコツコツ観たから暦上で丸2ヶ月以上かかってしまった。このレビューも気分転換に(トイレの際に)コツコツ書いていたら、マ、臭くなったんだナ。



皆さん多くの方が"ファーゴ"のファンでいらして、どうしても元祖である映画"ファーゴ"感を求めて比較してしまったりする処が多少なり有るだろう。
それがよ〜く解るんだナ。
だって私もそんな一人だから!

最終回は良かったぞぉ。うん、そりゃあ最後のキッチン場面なんか3回は観直したりしたので、んな事は我ながら珍しい事。なんでかな涙腺が緩んだりもしたんだナ。
ファーゴだぞ、ファーゴ!
コーエン兄弟作品で私ゃ泣くんかぁ?
ファ、ファーゴで涙出るんか⁈

否、泣いたんじゃないんだな。
"そ、そうきたかぁ…"と、してやられた感に或る意味で、敬服したのかも知れないナ。



正直、全編に渡ってかなり対訳が気になる部分もあった。(私はレビューに具体的な詳細は常に書かない様にしてるのだが)最終局での対峙場面は本シリーズにとっては非常に大切な意味を託したエンディングだったと思われ。
なのに対訳はかなり×2 酷いときたもんだ!
併し"訳が違うナァ…コレじゃ意味が違っちまうじゃん!"と思いつつも、御話と役者の演技が上手いんで、ついボォーっと観入ってしまえた。
繰り返すが、このシリーズ5の"行方と着地点"には固唾を呑んだもんだ。
或る見方をしたらばだが、同監督の過去作品の終わり方(まとめ方?)とは或る意味では"かなり変化有り"と感じたりしたナ。
惜しむらく子供が可愛いだけの添え物に終始していたのが非常に残念だが。

相容れない幾つもの価値観。
交差したままのベクトル。
ブラックユーモアやシュール感やシニカルな演出カラーは"ファーゴ"に於いては謂わば"お化粧"だ。
肉や奥の芯を形成する"骨格"を喩えるなら、上記がすれ違ったり衝突する際に放つ"火花"であろう。
大なり小なり、静vs動の如何なく、"偶然成る火花の必然性"こそがファーゴの骨肉だと私は思う。
それがこのシリーズ5の10話をもって、初めて或る一つの提案というか"着地点"を魅せてくれた…そんな様な気がしている。
或る人はそれを、綺麗事と捉えるかも知れない。又或る人はあくまで映画の中での他人事と捉えるだろう。
色んな人&色んな考えや、色んな捉え方があるだろう。それが人生世界だ。

だが併し。(本編の何処かの台詞にも有った様な気がしているが)アメリカに限らずこの世界というかニンゲンが蠢く社会=世の中って奴は、征服した強者が上昇した裏で、後に表の装いと成る歴史を刻んでゆく実態が有るだろう。或る目的に向かい、システム上都合の良い掟を強者が敷き詰めてゆくーとも言えよう。
それは脈々と未だに現代のそこかしこ=此処に有る我々の"繰り返す日常"って奴にも染み渡っていて、又は土台の様に敷かれていたりするのだ。
ルールや基準や規則や、つい軽々しく会話に出してしまう"常識"ってのも、多くの"見え難い悪意と善意の表裏一体"で構造されていたりもする。
するものだから、だから私達は、実は気付いているのかも知れない。
気付いているのに、そんな事を一々疑い悩みながら、ましてや真っ向勝負のチカラ等大概無いものだから(ジャンヌやグレタさんは有るのかな…)、知らないフリをして生活しているのかも知れない。

けれども、私達一人ひとりはきっと胸の奥底の何処かでは(ファーゴが示した方向性…謂わば"赦しと救済"のエンディングを観て)静かに頷いているのかも知れない。少なくとも私はそうだったのかも知れない。
或る意味でホッとしたり、胸を撫で下ろして静かに悦んでしまったりするのかも知れない。



我々の内側にも、一歩踏み間違えたら踏み板が外れ、何処までも堕ちてしまう様な"暗い穴の入り口"が在ったりはしないだろうか?
日々を生きる上では、悪いタイミングや意図出来ない不幸ってのは見事に重なったりするものだから、そんな時には一瞬の出来事で、ついアナタだって引き金を引いてしまうかも知れない。

エっ?銃が無いから極端には起こり得ない?
否、引き金とは鉄の塊の黒や銀色の銃だけに在るのではなく、妬みや恨みからの密かな行いであったり、つい熱くなっての言葉のナイフであったり…
男女間や家族間、玄関の向こうに在る閉ざされた空間では、茶飯事にあり得たりするもの。

観る側はファーゴシリーズを通して問われた形の筈だ。
アメリカ如何ではなく、どんな国のどんな人であれ、人が生きてゆく上では常日頃から何を信じて生きてゆくのか…
そして、いざ自らがY字路やクロスロードに立たされた時、進むべく道に迷った時の指針として、何を一番大切にすべきか&何を守りぬく所存でいるべきか…
コーエン作品に於いては其れを再三に渡り、シンプルに問われてきた様な気がしている。



改めて夢中度の順位をつけさせて頂くと、シリーズ2→5→1→4→3でした。
ハッキリ申せば3&4は個人的には魅入れなかった。
或るシリーズ或る回は素晴らしく、又他の或るシリーズ或る回はまるでつまらなくも感じたりは、長いシリーズ物ではよく有る事だし、致し方無いのかナなんて思う。
そしてコーエン兄弟が総監督であろうが、カメラや編集やの手と制作時代が異なれば、こんなにも空気感は変わるのだナと改めて思う。

総じては、やっぱり観れて良かったナ。難しいだろうがファーゴシリーズは続けて欲しい。金太郎飴的なパターンがあったとしても、結局好きなもんは好きだ。



♪追伸
次回、美容室に行った際はいつもの担当姉ちゃんにこう頼もうかナ…
マンチことウーラ・ムーンクの写真をみせて"一寸この髪型にしてくれない?"って。
"いや、やめた方がいいですョ"って諭してくれなくて、アッという間に仕上げられたらどうしよう…
あの髪型に成ったワタシに、一体誰がキリストのパンをくれるだろうか…

否、誰もくれないだろう。

人生は厳しい。
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