タケオ

FARGO/ファーゴ シーズン3のタケオのレビュー・感想・評価

FARGO/ファーゴ シーズン3(2017年製作のドラマ)
4.1
『FARGO/ファーゴ』シリーズは「世の不条理」についての物語のため、必然的に「神」の不在を描くこととなる。にも関わらず『FARGO/ファーゴ』シーズン3には、「カインとアベル」や「ヨブ記」をはじめとした宗教的なモチーフがふんだんに散りばめられている。が、その全てはあくまでモチーフにすぎず、本シリーズの登場人物たちに「神」の存在を感じさせるような「救い」が与えられることはやはりない。本シーズンに散りばめられた宗教的モチーフは、明らかに嫌味として演出されている。
 本シーズンの登場人物たちは次々と想像を絶する事態に見舞われるが、「神」はただ沈黙あるのみ。真に理不尽かつ不条理な事態を前にした時、「信仰」という名のおためぼかしが如何に無力なものであるかを『FARGO/ファーゴ』シーズン3は鑑賞者に徹底的に突きつける。宗教的モチーフが散りばめられているが故に、「神の不在」が鮮明に浮かび上がるというこの皮肉。『FARGO/ファーゴ』シーズン3に満ち溢れる嫌味の鋭さは、映画版を含む他シリーズの中でも群を抜いている。
 『ファーゴ』のラストといえば、主人公が家族とともに家の中で静かに肩を寄せ合うカットがお約束だが、『FARGO/ファーゴ』シーズン3はそのお約束までも完膚なきまでに破壊。僅かに残されていたはずの人間の「温かみ」が失われた結果、『FARGO/ファーゴ』シーズン3は世の残酷さだけが一段と際立つ苦〜い結末を迎えることとなった。どれだけ足掻こうとも、「神」はひたすら沈黙あるのみ。しかし、それでも「神」を信じなければ、この理不尽かつ不条理な世界はあまりにも辛すぎるじゃないか。「神」の不在をどこかで自覚しながらも、それでも「神」に縋ることをやめることができない。そんな人間の愚かしさを生々しく描出してみせた、シリーズ最高傑作だと個人的には思う。

「お前まで愚かなことを言うのか。わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか」
——ヨブ記2:10——
タケオ

タケオ