HicK

ブラッシュアップライフのHicKのレビュー・感想・評価

ブラッシュアップライフ(2023年製作のドラマ)
4.9
《口コミ通りの傑作。大切な作品になりました》

【総括】
ひっっっさしぶりに出会った"一回見だしたら止まらないドラマ"。口コミを目にするのがちょっと遅れたけど、評判通り面白かった。往年の人気テーマ:タイムリープを土台にしながらも、ミニマルでミクロで地味。だけどその代わりに親近感/身近さという最大の魅力を持ったストーリーがかなり突き刺さった。

かなりマイルド化・コメディー化されたタイム理論だが、いい意味でのくだらなさは「サマー・タイムマシン・ブルース」、死にゲー感覚は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、自身の影響の良し悪しという点では「素晴らしき哉、人生!」「バタフライ・エフェクト」などにも共通し、全てのタイムリープ作品を日本人に合わせて調節させたような物語の虜になった。

バカリズムの脚本の巧みさに心を掴まれ、シュールさにクスッとしながら、『人生の大切さを説くメッセージ』を"体感"させてくれる作品。

以下ネタバレ↓


























【バカリズム脚本】
伏線回収と使い回しの巧みさや、シュールな面白さはもちろん、生活の中に隠れるミクロな"あるある"を盛り込むのが上手い。時代的なもの、友人関係、人生観にいたるまで共感してしまうセリフが多々あった。何故か「地獄の花園」しかり女子目線の"あるある"を見つけるのも上手い。

【自然体な俳優陣】
コメディー作品であるにも関わらず過剰演技は無く、誰もが自然体でボソボソ会話しているシュールさ・アドリブっぽいライブ感が好きだった。それぞれの人物がリアル。本当に終始クスクスさせられた。演技のディレクションで言えば、コメディー版・是枝裕和作品と言っても過言ではない気もする。

【サポートキャラたち】
ストーリーの特性上、何も事情を知らない周りの人物が愛おしく思えてくる。尊い。「脇役への情」は主人公・麻美に感情移入できる大切なキーポイントだった。

【ただ、もうひと推し】
最終回は良くも悪くも起伏なし。もう一つ盛り上がりがあってもいいかな?と思いつつも、壮大な物語に対しての長尺エピローグとしてみれば充実感はあった。

あとは、コメディーと割り切ってるからか死んだ直後、麻美に後悔とか名残惜しさとか悲しさなどの感情がまったくなかったのが気になった。

欲を言えば、実質150歳以上生きてしまっている負の側面とか孤独感ももう少し見たかったかな。(でも、作品のテイストが変わっちゃうか)。

【クスッとしたで賞】
☆最優秀賞
・『粉雪』

☆ノミネート
・『記憶と事実が異なる成人式後のカラオケ』
・『いつも空気読めないなっち(夏帆)』
・『てきとうな"カタルシス"の解釈』
・『ゲームボーイアドバンス回収というカタルシス』
・『ドラマ「ブラッシュアップ」のメタさ』
・『誰からも好かれてない先生をしーちゃんの離婚相談に無理やり巻き込むくだり』
・『「みやおかさんは、きこんしゃ」のダルマさんがころんだ』
・『何周しても変わらない会話と食べ物』
・『安藤サクラによる子役へのアフレコ全て』

【グッときたで賞】
☆最優秀賞
・『5周目でやっと4人が揃ってお茶するカタルシス』

☆ノミネート
・『(歌手志望の)福ちゃんの人生を変えずに応援する』
・『4周目のセンチメンタルな友人関係』
・『妹・遥の結婚式』
・『トンネルを見つめ喪服で涙し、積む』
・『宇宙ゴミの落下を眺め、達成感』
・『"最後"って言われると貴重に思える人生』
・『大切な人々と関わらない方が相手のためになる』と知った時の(映画「バタフライ・エフェクト」並みの)切なさ』

【俳優賞】
☆MVP
『安藤サクラ』
当たり前だけど、最高。

☆最優秀助演賞
『木南晴夏(みーぽん)』
抜群の自然体の説得力。本当に居そう。

☆助演賞ノミネート
『志田未来(妹・遥)』『黒木華(玲奈)』
2人とも最高な自然体演技。

☆瞬間最高爆発力
『水川あさみ(まりりん)のキレる演技』
もはや彼女の特技。いつ見ても気持ちいい。

☆特別賞
『麻美(安藤サクラ)の幼少期から学生時代までを演じた子役全員』
内面の"大人"を感じさせる演技が素晴らしい。

【真・総括】
『人生一度きり』とは言うけど、『これが最後の人生』って思うと、「楽しもう」「悔いのないように全力で生きよう」と思わされる事を初めて知った。大きな教訓。それを全編通して表した今作は大切な作品になった。

地味な話から始まったはずが、大切な人々を救うため、数百人の命を守るための戦いになり、(やってる事は普段の生活なのに)知らず知らずのうちにもはや大河ドラマ並み・スーパーヒーロー並みの壮大なドラマになっていた。そんな物語は私たち一個人に対しても後押ししてくれているようだった。

ずっと心に残るであろう傑作に出会わせてくれた高評価レビュワーたちに感謝。
HicK

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