horry

なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~のhorryのレビュー・感想・評価

4.0
すごく良かったです。ハマりました。
地方で図書司書のアルバイトをするデボム(イムシワン)。その町に仕事をやめ、「何もしたくない」(原題)と思ったヨルム(ソリョン)がやってくる。ヨルムは殺人事件のあったビリヤード場に住むことになり、住人たちからは疎ましがられていく…みたいな感じではじまります。
ものすごく色んなテーマが入っていて、恋愛だけでなく、成長物語であり、家族や家のしがらみや問題があり、経済格差、社会的に弱い立場にある人への視線が描かれています。
サムネイルやポスターは、デボムとヨルムの爽やかな感じのものになってますが、内容はずいぶん違います。出てくる「家族」も、ほぼ「事情あり」の設定になっています。

初回はめちゃめちゃしんどいです。ヨルムは恋人に冷たくされ、会社でもひどい扱いを受けている。兄も身勝手で、それまで目立たぬよう流されるように生きてきたヨルムは限界を迎えるのですが、これがもう、ほんとにつらい。
何者にもなれない、これといって優れた点を持たないヨルムは「お前は牛のように人のいうことを聞いて働いていればいい」とまで言われてしまいます。

「私の解放日誌」で描かれていた閉塞感には地方ということが関係していましたが、こちらの舞台はソウル。
「私の解放日誌」であった地方という枷がない分、ヨルムへの批判はヨルムという人間そのものの批判となり、ヨルムは行き詰まってしまう。

「何もしない」と決心し、バックパック1つで到着した田舎の町でヨルムはぶらぶらとして過ごし、不安な気持ちを抱えながらも仕事はせず、人生の目標もたてません。
つねに「何者かになれ」と言われ続ける社会で、「何もしない」という選択をすることは、批判や好奇の目にさらされます。
そんな視線を受けながらもヨルムは気ままに暮らすのですが、彼女は自分の心に沿った正しいと思う選択をしていきます。
「何もしない」はずの彼女は、町の暮らしの中で様々な人と出会い、その関係の中でたくさんの選択をしますが、それは自分の心に沿ったものです(一度だけ、迷った末に心に沿わない選択をしてしまいますが)。
何者になれなくてもいいし、それより大切なものがあるということが、ヨルムの姿から描かれるのが、このドラマの一番美しい点だったと思います。

「何もしない」ヨルムと似ているのが、大きなトラウマをもったデボム。壮絶な生い立ちもあり、子どもとしか十分なコミュニケーションがとれないのですが、ヨルムには心を開きます。
ヨルムとデボムと対照的なのが、人生に目標がないのは間違ってると考えるジヨンです。パクイェヨン、めっちゃ演技がうまい。

全体としては、ヨルムの変化とそれに感化されるデボンの関係がメイン。デボンは難しい設定なんですが、イムシワン、すごく良かった。感情の変化がない役ですが説得力があり、終盤の爆発は迫力ありました。

あと、ヨルムはデボムの前ではちゃめちゃな行動を見せるのですが、ここが声を出して笑うぐらい面白かった!酔っ払いの演技、最高です。

この3人のほかに、ヨルムと姉妹のように仲良くなるボム(シン・ウンス)とボムに思いを寄せているジェフン(パクジェミン)のラインがあり、こちらはとても可愛らしい。ただ、ボムの家庭環境が複雑で、そのから二人の関係を描いているので、単にかわいいというものではないです。

そして、「賢い医師生活」のウジュが登場しています。相変わらずかわいいし、大人ぶったセリフも最高でした。
horry

horry