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ジェン・ブイのSQURのレビュー・感想・評価

ジェン・ブイ(2023年製作のドラマ)
4.0
いまもっとも「分断と正義」に対して正面から向き合おうとしているドラマシリーズであることに間違いない。
『ザ・ボーイズ』本編では、新自由主義経済と手を組み力の象徴として描かれてきた超能力者だったが、本作ではうってかわって古典的な‪アプローチとして、”‬超能力者たちのマイノリティ性‪”‬にフォーカスしている。
「差別が必ずしも一方向に存在せず多層的だ」という指摘は本編でもホームランダーという屈強な白人男性の孤独や苦悩を扱うことで描いてきたが、今回はブッチャーたち”‬持たざる者‪”‬とは違い超能力者であるという点で対称的ながら、同時に新自由主義に反旗を翻す者たちという点では同じ立場とも言える学生たちを扱うことでより広がりのある指摘になっている。

学生ドラマ的側面もとても重要視しているようで、モラトリアム期間としての大学生が、はじめて世界(新自由主義社会)と出会い、どのように自分の正義を見つけ選択していくのか、というテーマを一貫して描こうとしている。また、自身の能力の真価に気づいていくくだりは、大学生が自己理解を深め自分の生きがいを見出していく様子でもありながら、能力ものドラマではおなじみの熱い展開である”‬覚醒‪”‬シーンでもあり、二重に美味しい。本作の主人公の能力は、血操能力という主役をはりにくく、最初のうちは不便そうに見えるのだが徐々にその応用の幅が見えてくると最強の一角とまで思えてくる。少なくとも歴代の血操能力者の中ではかなり上位の実力だろう。

ただ、統合失調症や摂食障害や自傷行為などに重ねられる超能力描写については、それが青年期特有のものとして連想されているだけなのであれば安易に思えるし、実際にそのような精神疾患の問題を充分に描ききれているように思えなかったのは玉に瑕だ。


本編と徐々にリンクしていく物語の展開はワクワクするとともに第4シーズンへの期待も高めてくれる。超能力者学校が舞台なので、本編よりも超能力描写が多目になっているのも嬉しい。
後半の超能力バトルでは「スタンド攻撃を受けているっ!」的な、あきらかに異常なことが起きているけれど、誰がなにをしているのかわからない! という状態で推理し打開策を見つけていこうとする場面もいくつかあり、ジョジョファンはみんな好きなはず。

本編と合流するのかな?
それとも別にシーズン2があるのか。
どちらにしても今後の展開がとても楽しみだ。
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