ドンキーホーグ

コペンハーゲン・カウボーイのドンキーホーグのネタバレレビュー・内容・結末

コペンハーゲン・カウボーイ(2023年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

体育祭みたいなジャージ着やがってこの主人公…

体育祭でした!赤ジャージチームと青ジャージチームは頑張って戦って下さい!青チーム、負けています!頑張ってください!赤チーム!目からレーザーを出すのは反則です!

主人公、最初は赤青ジャージで、最後まで着込むことになる青ジャージはシモーヌに渡されることになる。TENETかこれは。

感想として、レフンのドラマであるToo Old To Die Youngと比較すると、その足元にも及ばない感じがある

まず一点目として、長回しの画作りにしては話数も少なく、エピソードも短いため、とにかく時間が足りてない
Too Old~の時は、1話あたり90分ぐらいで10話あったので、長回しにして1カットを5分とか映しても話自体はきちんと進行していた
本作は長回しのシーンが多いのに、エピソード自体は短いため、見せれるものが必然的に少なくなる

そして色々詰め込む要素が多く、場所も人も変わるのに見せれるものが少ないとなると…?

結果としてCharacter developpingをほとんど行っていない、Too Old~のときはキャラクターがどう変化していくか、どう運命が転ぶのかを見れたのに…

映像表現としては斬新で良いんだけど、映像自体のリッチさにおいてとToo Oldにやはり軍配が上がる(曲選択もToo Oldの方が遥かに良かった、サントラは本作のものも素晴らしい)
良く言えば実験的、悪く言えば自主制作っぽい
Too Oldのときより予算が少ない…?

ただ4話の夜の街シーンが史上最高レベルで良くて、見ていて本当に快感を覚えたので4点
夜景と美しい女性を撮らせたら、レフンの横に出る人は居ないね(CMみたいな画づくりだけど)

レフンと小島秀夫は仲がいいので、互いにカメオ出演をさせ合っているが、小島秀夫を喋らせたのは本当にどうかしてると思う
シーズンの締めが素人の棒読み演技で台無しになってる(Too Old のときは喋らなかったからまぁ様になってたのに)
内輪ノリも大概にしないと…レフンは言語の壁があるから、日本人の演技の質が分からないのだろうか
小島監督も気を使って辞退するなり演出変えるなりなんなりしろよ…分かるだろ…

Too Oldは割と現実に沿っていたものの、ビジョンが見える女性が居て、そのビジョンがテカテカ人間の集団なわけだけど、本作にもそれが出てきて
「レフンにとってのビジョン的なものって、テカテカ人間集団で確定なんだ」
という驚きがあった

レフンの暴力シーンは、スコセッシ映画とか北野映画のそれに似てると思う。容赦がなくて静かで、あっという間に終わってしまう。残虐だがドラマチックではなく、リアリティがある。

レフンは大規模な撃ち合いを象徴化するということを前作Too Oldで行った。暗闇で銃を撃つ男と、撃たれて弾けるナチズム、資本主義、アメリカ。
本作のギャング抗争では全く同じことを、質が低いままに焼き増ししているような印象を覚えた。演出として格好良くはあるが、何となく本作における象徴化の意味が伝わらない(意味などないのか?)

今作でのアクションは、正直残念な出来栄えだと思う。例えば小柄な女性であってもマーベルのスカヨハみたいに、強くしなやかなコリオグラフィーを採用すれば、戦闘に説得力をもたせることはできる。ハリウッドスターのほとんどは実際には無敵の超人ではないが、映画はそう見せてくれる。上手に嘘をつくことができる映画が良い映画だ。
本作の主人公のアクションはお世辞にも説得力があるものではなかった。後半戦から拳での戦いが入るわけだが、部分部分でスローモーションを用いるため、主人公の身体がブレブレで体幹が無いのがどうしても目立ってしまう。戦闘も男性的な、腕力で打ち倒すようなアクションで、主人公のか弱くブレる細い腕が、それを実現しているようには見えない。

たくさん練習したんだろうな、というのと素早く複雑な動きを出そうとしているのは分かる。しかし、如何せん主人公が華奢すぎるのと、体幹がびっくりするぐらいブレているのとで、「そんなわけ無いだろ」というツッコミがどうしても先に来てしまう。自主制作感を強く感じるのもこの点に問題があるからだと思う。

テーマとしてはやはりいつものレフンであり、Woman in trouble、歪んだ親子関係、マザーコンプレックス、虐げられる女、超常的な力、暴力。いつも通りの要素が一通り入っており、もはやこれらがレフンとしてのシグネチャーであるとも言えるが、それぞれの要素すべてが本作では薄い。
いわば本作は時間制限つきビュッフェみたいなもので、一通り様々な料理を楽しむことはできるものの、全部少しずつしか食べることができない。
ではToo Oldはと言うと、こちらは時間無制限のビュッフェであり、全ての要素を飽きるまで堪能できた。
本作はとにかく短すぎる。長回しも前作みたいにもっと本気でやって欲しかった。

総評としては、楽しくなりそうなキャラクターも要素もあるのに、掘り下げられていない、全体的に中途半端な感じ。

あと、これ絶対続編でないと思う。それを加味してもこの尻切れトンボ感も良くはない。
(それでも4.0をつけるのはレフンのドラマを体験するのは楽しいから。あまり良い出来ではないが、レフンが作品を発表しなくなるよりは1億倍マシ)