桃色

みをつくし料理帖の桃色のレビュー・感想・評価

みをつくし料理帖(2017年製作のドラマ)
4.2
かなり原作に忠実に丁寧に作られてるドラマでした。
といっても、このドラマを見たのが先で、それから原作を読んだんだけどね。それほど余韻が強かった作品です。大好き!
で、先日新たに2020年の角川映画の「みをつくし料理帖」を観て泣いて、そしてこのドラマの感動を呼び覚まされてので書くことにしました。レビューを。
そもそも、感動を記録したいからレビューをする気持ちが湧くわけで、数多のスルーでいいものまでここに残す必要はあるのかなと思っているんですが、でも「つまらなかった」というレビューも正直とてもありがたいわけです。だって、オンデマンドでいくらでも見放題だけど時間には限りがあるからね。できるならいい作品だけで感動をモリモリにしたいでしょ。

この作品、あまりにも好きだったから今も録画がMy HDDに残ってます。
黒木華ちゃんは、「天皇の料理番」でも「西郷どん」でも彼女の登場するシーンが鮮明に思い起こせて、そして思い出すだけで涙できる逸材ですね。ここでも素晴らしいです。
そのほか「ごりょんさん」の安田成美さんが本当に素敵ですし、小松原の森山未来さんがこんなに時代劇が似合うと初めて知りましたよ。森山さん、ハンサムじゃないけどスルメ。私の大好きな韓国俳優のリュ・ジュンヨルみたいです。

さて、二人の幼馴染、といっても塗師の職人の娘と大店のいとはんという元々の生い立ちが違います。「旭日昇天」と「雲外蒼天」要らぬお世話の手相占いを証明するが如くに物語は進んでいくんです。
角川映画版と違うのは時間の長い分、この二人以外の登場人物の背景まで描かれるので最後には「つる家一座」のごとく団体で応援したくなるんですよ。
その中でひとり別格なのが森山さん演じる小松原。少しずつ澪と心を寄せ合ていくアイテムがお料理なんですよね。「ごりょんさん」のいう料理は作る人の心の現れという通り、小松原も澪の料理の才覚を認めていきます。

ここに登場するお料理のレシピですが、原作者の高田郁さんの原作からNHKがちゃんとビジュアル化して美味しく登場させています。その匂いも立ち込めるようで毎回そのレシピが専用サイトに掲載されていましたね(さっき覗いたらまだWeb掲載されてました)
亡くなった江戸風俗研究家の杉浦日向子さんがおっしゃっていたけど、江戸時代っておおらかで人情に厚い時代だったんでしょう。彼女(杉浦女史)の話では「飼い犬が一匹でお伊勢さんに行って戻ってくる」この話がとても印象深いです。道中、その犬は各宿場では餌をもらい旅する人々に代わる代わる導かれ首に入れられた銭でお札を買ってもらっい帰路も同様に人々に導かれて家に帰るそうで。
江戸庶民は豊かでなくてもケチじゃない。大工は午前中しか働かなくて午後からは飲んだくれて宵越しの銭はモタねぇって明るく笑う。鎖国時代にいい文化を築いた我が国です。高田さんもそんな江戸に魅了されて時代小説をお得意となさってますよね。

話途中に滝沢馬琴が登場して澪と小松原の未来に大きな影響を与えるわけですが、こういう大昔の実在人物を作家さんが人間に戻してくれるのって楽しいですよね。浅田次郎さんの小説でも森鴎外や乃木希典が人間として生き生きと生きて魅力的です。時代小説って若い人にはなかなか読んでもらう機会がないかもしれないけど、日本を好きになれる必須アイテムだと思っております。

余談になりますが旭大夫が野江ちゃんだとわかるシーンの「雲外蒼天」の筆文字。これすごく美しい文字で野江ちゃんの知性を表してました。
映画版も綺麗な文字だったけど、これはNHKの勝ち!

次は「みをつくし料理帖スペシャル」を書きます。これは書きながら泣くと思うわ。
ということで、作品のレビューというよりなんだか一人で余韻に浸っただけのようになってしまいましたね…
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