ゆず塩

犬神家の一族のゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

犬神家の一族(2023年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【感想】
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が面白かったので、録画して眠っていた『犬神家の一族』をやっと視聴。雰囲気が似てるのです。

脚本が、特撮やらアニメ脚本を多く手がけた小林靖子さん担当なので色々期待。あと、Twitterで「ラストシーンがうんたら」ってのを見てしまっていたので、どんなもんじゃろな?ってな感じでした。

10年以上前に2006年版の映画『犬神家の一族』は観たことがあったので、フワッと内容は覚えていた気がしたけど、全然覚えていなかった。若干、脚色もされているらしいし。

で、感想。超ネタバレ。
犯人が誰か忘れていたので、誰が犯人か考えながら観てた。

一番、犯人らしいのはやっぱり青沼静馬(ニセ佐清)。だから、一番犯人の可能性は低いのでしょう? ただ、ニセ佐清が青沼静馬ってのは薄っすら覚えてて。「なんかやってたよなぁ」って思いながら見てたし、犯人だとつまらないと頭では理解しつつ「ニセ佐清(静馬)が犯人だよね」って思ってたかな。
最終的に犯人じゃないし。さらに、“犬神家に恨みも持っていない”っていう展開にはちょっと驚かされた! シナリオ的に“恨みを持っている”という予想を裏切りたかったんだろうな。個人的にいい裏切りだと思いました。原作だと恨みを持ってたのかな。原作知ってる人からすると違和感なのかも。

逆に一番犯人じゃなさそうなのは、珠世。だから、一番犯人だった時に面白い人。なのだがどうみても犯人には見えなかった。実際、犯人じゃないし。
完全にヒロインのポジションなんですよね。ただ、関係者である以上、容疑者の一人になってしまって。ボートの深水とか命を狙われることで、被害者っぽくなってるが。いや、それが犯人っぽいんだけど。自分の中だと佐智に襲われて、佐清(佐清)に助けられるあたりで完全に容疑者から外したかな。いや……だから、ここから犯人パターンだったらそれはそれで面白くて。
どうでもいいが、『コナン』の蘭や、『金田一少年~』の美幸、みたいに完全無関係者パターンとは違うよなーって思いながら見ていたり。

犯人の松子は、全然犯人っぽくないのがおもしろいな。金田一も警察も疑うそぶりを見せないし。だから騙されたのかな。大竹しのぶさんの迫力に圧倒されたってのもあるかも。松子の動機って、「佐清が球世に選ばれなさそう」っていうすごく単純なのに!
逆に青沼静馬の“恨み”の動機のほうが物語として面白そうというか。「顔を隠した兵隊(本物佐清)が犯人と見せかけて、ニセ佐清(静馬)が犯人、って見せたいんでしょ!?」という作者の意図を予想してて。でも、作者は「と、読者は予想するだろう」という前提で書いてて。上手く誘導された。

『犬神家の一族』って、トリックを暴く物語じゃないんだよね。誰が何をしたのかという謎解き要素はあるけれども。犯人のアリバイを崩す、という形ではない。
どちらかというと、「何でそんなことしたのか?」っていうのを考える話なのかな。菊で飾ったり、琴の糸巻いたり……。事件の全容を推理する物語?

推理モノの観かたとして正しいか分からないけれど……作者の意図を読み解くゲームって感じで読めば、誰が犯人か分かるのかなぁ。犯人としてベクトルが向いていない人、作者が隠そうとしている人を考えて見ると犯人がわかるのかも? ……とか考えたり。推理モノ疎いんですよね、私。

色々脱線しましたが。
犬神家の人々が私利私欲の塊の最低な人たちで良かったです。何が良いんだかわからないけれど。殺されていくのを見ても、同情できないからいいのかな。こういう人たち居なくなってくれ、っていう願望が発散されていいのかも。

あと、ラストの金田一と佐清(本物)との会話も好きでした。
金田一ってつまり視聴者だから。深読みする視聴者に向けた佐清(脚本家)からのセリフっぽくって面白かった。物語的には後味が悪くなるけど。それも含めて『犬神家の一族』って気持ち悪くて最高。
ついでに“愛からくる憎しみ”をテーマに、物語全体をまとめ上げているのもベタだけど秀逸。

……うーん、こうして感想を書くと予想以上に楽しんでるな。
ゆず塩

ゆず塩