ブルーノ

バツイチ男の大ピンチ!のブルーノのネタバレレビュー・内容・結末

バツイチ男の大ピンチ!(2022年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 自分は27歳の独身男性なのだが、トビーはもちろんリビーにも大いに感情移入してしまい、片足を踏み入れつつある来るべき未来を見せられたような気がして物凄く刺さってしまった。

 物語の前半はジェシー・アイゼンバーグの独壇場といった様相で、ウディ・アレンを彷彿とさせる早口でまくしたてる神経質なキャラクターには大いに笑わせられた。ついには彼の猫背姿を見ただけで吹き出してしまう始末で、これは『サクセッション』S2のジェレミー・ストロングのなで肩で爆笑して以来の体験である(キャラクターと身体の究極の一致!)。

 また、彼がインスタについて言及すれば『ソーシャル・ネットワーク』、自然史博物館に行けば『イカとクジラ』というように、様々な文脈を見い出せる点も面白かった。特に、ノア・バームバック作品への目配せは強く感じられた。

 そして、物語の後半。E5におけるリビーの「男性のことを書かなきゃ誰も読んでくれない」という発言から、本作のストーリーテラーであるリビーこそが真の主人公であり、本作は劇中に度々登場するアーチャー・シルヴァンの幻影から解き放たれた、彼女なりの『離婚』であったことが明らかとなる。E1であれほどまでに過激だった性描写やトビーの存在感が、後半に進むにつれて次第に薄れていく演出も、ストーリーテラーであるリビーの変化を反映したものであると思われる。

 最後に、ウディ・アレンやノア・バームバック作品のような密度の物語をドラマのフォーマットで見せられたらそれはもうたまらないし、1話も飽きさせなかった制作陣の手腕にはただただ脱帽するばかりだった。
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