サンタフェ

キラー・ビーのサンタフェのレビュー・感想・評価

キラー・ビー(2023年製作のドラマ)
2.8
1話を観て刺さらず保留していたのですが、評判がよく感想&考察の受動喫煙で見所を掴み再チャレンジして完走しました。

1話目感想。

うーん、ドナルド・グローヴァーなのでアトランタっぽいのかと思ってたらAmazonがeuphoriaを作ったらという感じでした。

脚本は面白そうな兆しをみせるものの、映像と音楽がお洒落じゃないと始まらない作りなのに映像と音楽が全然お洒落じゃなかったのが厳しいと感じてしまいました…(ズバリ言ってしまえばだいぶダサかった…)。

いちドラマとして観ても2023年にこの映像で出されるとうーんという感じですが、せめてジャンルがファッションを気取らずにサブカルっぽい作風だったらよかったのに…。

全話感想。

アトランタの時も少し思ったのですが、当該社会問題を作品内で説明する気が皆無な上に作品内でも特に解決を目指すわけではないという立ち位置の作品が私はけっこう苦手なのかもしれません。

本作もアトランタの時も「〜を知ってれば面白いんだろうな」と思いながら観てました。事情の説明がないので当該問題に対してあまり興味が持てないのと、それでいて解決を目指すわけでもないので希望を与えるでもなく、問題を既に知っている人の不満に共感するだけの愚痴っぽい作品になってしまうというか。不満の捌け口といってもよいかもしれません。そういった創作の立ち位置が少し苦手かもしれません。

当該問題の悲惨さをひたすら描くネガティブな視点の作品であっても、その問題を視聴者に紹介する機能があれば色々な人が問題意識を持てるので作品が現実世界にとってポジティブな影響を与えられると思うからです。説明が皆無だとそういった機能もありません。

アトランタはその要素を考慮しても単純にオフビートなコメディドラマとして面白かったので好きでしたが、本作は上で書いた映像面に加えて脚本面も出来がよいかというと微妙でした。Netflix「ダーマー」のようなシリアルキラーものとしての出来の良さは感じませんでした。沸点の低い異常者が行き当たりばったりで殺しているだけで(こんな言い方もどうですが)殺し方も別に面白くありません。ちょっと「キレたオタクつえー」的ななろう小説が揶揄されるような作風すら感じてしまいました。

また、他の方々の感想や考察を拝読してメインテーマらしきものを知ってから視聴していたので観やすかったのですが、作品の構造とテーマに齟齬が出来ていたのも気になりました。

本作は現実の音楽業界におけるファンの狂信化、さらにそれがSNSで集団としてエスカレートする問題に触れているのが評価ポイントだと思うのですが、主人公のドレが繰り返し反抗を犯す動機は全く関係ないのですよね。

6話の描写から読み取れることは、ドレは元々里子のため天涯孤独であったところを世界で唯一受け入れてくれた義姉マリッサを狂信します。そしてそのマリッサが狂信していたという理由でアーティスト(モデルビヨンセ)も狂信しているので、別にアーティストのファンダムの影響で狂信してるわけではないですよね。ストリップクラブで同僚(ボス?)に指摘されている通り、アーティストのことを本当に好きで理解してるわけでもありません。

実際に6話で語られる通り、お泊まり会では義姉に危害を加えられた際に即殺意に繋がっており、1話もアーティストの悪口は言われていますが直接の原因は姉を自殺に追い込まれたから(恋人に殺されたのか本当に自殺だったのかはちょっと読み取れませんでした)。以後、姉がいなくなったことで姉への執着がアーティストに移り変わる形です。最終話のアーティストが姉の姿をしていたのもそういう理由だったと解釈しています。

悪質なファンダムがアンチの住所などを提供してくれる側面はあったかもしれませんが、ドレがシリアルキラーであった理由と背景はドレ自身にあっただけなんですよね。例えばファン同士がアンチへの私的制裁を自慢しあったりけしかけあってエスカレートした…とかではないわけです。

そもそも作中で(たぶん)唯一のファンダム情報の住所は結局殺害に繋がりませんでしたし、他は自分でSNSで調べていただけですしね。

そういうわけで、

・本作を観ても外部の解説を観ないと当該問題=音楽アーティストファンダムのアンチ感情の集団エスカレート については全然わからない
・その上で本作主人公が犯行を犯す理由はファンダム問題とほとんど関係がない
・Netflix「ダーマー」のような純粋なシリアルキラーものとして観ても出来がよいとは言えない

…という組み合わせで、個人的には何を評価すればよい作品なのか掴めなかったのが正直な感想です。繰り返しになりますが、せめて映像や音楽がeuphoriaのように無条件で格好良ければよかったのになぁ。

主演のドミニク・フィッシュバックの存在感のある演技、ゲスト出演のビリー・アイリッシュの演技はどちらも素晴らしかったです。
サンタフェ

サンタフェ