ゴトウ

BEEF/ビーフのゴトウのレビュー・感想・評価

BEEF/ビーフ(2023年製作のドラマ)
3.7
けっこう面白かったしA24製作作品って熱烈なファンがついてる(シャバ僧っぽさを感じるので自分からファンとは言いづらいが)イメージだったのですが、観測できた限りでは公開直後だけ話題になって終わってしまった印象。自分も見終わるまでにだいぶかかってしまった。日本語吹き替えがないのが大きいような気がする。一話あたりは30分前後でコンパクトだけど終始重苦しいトーンなので、英語がリスニングできない=適当に流しとくことができないのが枷に感じてしまった。

内容自体は現代社会の/アメリカにおけるアジア系の/家族道徳の息苦しさと、そうした抑圧を受けて的外れに暴発するフラストレーションが事態をどんどん悪化させていく展開が苦しくも目が離せなくて面白かった。満員電車の中でクソイラついてる人とか、異様な勢いでレスバトルしてる人とか、本当は同じ苦しみを抱えたものとして手を取り合えるはずなのに「弱いものたちが夕暮れ…」になってしまう哀しさ。金があれば幸せになれるわけではないが、金があるかないかではとんでもない差がある。ダニエルとエイミーの溝が埋められなかったのはその差のせいで、終盤の悲劇的な事件も金のために起きてしまう。

そうした溝を乗り越えてついに二人がわかりあうきっかけが、「雑草で酔う」トランス状態でのインナージャーニーと対話、そしてデジタルデトックスというのがなんとも今っぽいというか、面白いのは面白いけどセレブの意識高い瞑想みたいな雰囲気も感じなくはない。銃はおもちゃじゃないというのを最後まで引っ張ってくるのも憎い。"This is America"か……。
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