かりんとう

BEEF/ビーフのかりんとうのレビュー・感想・評価

BEEF/ビーフ(2023年製作のドラマ)
4.7
山程みた映像作品の中で、間違いなく2023年度のマイベストNo.1!!

ええ、A24は好きですよ。ミーハーだとかわかったふりだとかなんだとか言われようとも、A24が好きだと叫びたい。

しかし私がこのドラマを観ようと思ったきっかけは、実はA24制作だからという理由ではない。
ネトフリでいつものようにとあるドラマを観終わったあと、自動再生で流れてきた本作のトレーラー。
イントロのアルペジオが流れた瞬間、一気に懐かしさとアドレナリンが吹き出した。
「スマパンの”TODAY”やぁぁぁぁ!!!」
我が青春Smashing Pumpkinsの名曲、【Today】がBGMとして使われていたのだ。

ストーリーの面白さはさることながら、このドラマのサントラは最高にドンピシャ。おそらく自分と同世代の制作陣なのだろう。90年代を彩ったグランジ、オルタナティブミュージックが毎回エンドロールや本編で流れる。エンドロールを毎回最後まで堪能するドラマは、記憶の中では他にない。

と、選曲センスを褒め殺したところだが、このドラマの秀逸さはもちろんそれだけではない。
欧米に生きる東洋人というのは、母国に暮らす我々の想像を遥かに超えた苦労があるだろう。成功するものもいれば、一生地を這うような生活を強いられる者もいる。
この物語はそんな対象的な在米東洋人二人の小競り合いから始まる。
あおり運転をしたとかされたとか、私達の日常にいくらでもある「一瞬めっちゃムカついた」出来事が発端だった。

最初はお互いの仁義なきくっだらないリベンジの応酬にフォーカスしたコメディなのかと思っていたが、物語は思わぬ方向に動き出す。
そして自分でも驚いてしまったが、最終回では号泣してしまった。
「Runaway from me!!」(俺から逃げるんだ!!)
ダニーの後悔と、懺悔と、哀しみと、そして僅かな希望のこもったこのシーンは、完全に彼と同調して涙が出た。
彼がムカついた女の家に小便を撒き散らしていたエピソード1から、誰がこんな展開になると予想できただろうか。

このドラマはネタバレサイトを読んで観た気になるのはあまりにも勿体ない。というか、ストーリーだけ追ってもなんらピンとこない。
是非、どっかりと腰を据えて鑑賞することをおすすめする。
きっと彼らを好きになるはず。