このレビューはネタバレを含みます
『季節のない街』を観た。イタイなってこと、キツイなってこと、突き詰めると残酷だなってこと。毎日生きてればそういう他人の醜さみたいなものと日々柔道して受身を取りながらなんとか毎日を踏み締める、人生とはタフネスそのものだけど、こういう良い物語に出会えると、心の底から良かったと思える。まずなんと言ってもクドカン凄い。「あまちゃん」で震災復興を後押しして自らも名を上げた。でもこの人はそこで終わってない。震災の後も生活が続いていてそこで生きてる人達を、あまちゃんが光ならばその裏にできた陰を、ずっと見ていて、どこかケツを持つようにその陰を真正面からドラマにした。クドカンはケツを持てる大人なんだ。ケツを持てる大人の、おっさんの、如何に居ないことか…。このスタンスが既に素晴らしい。というかこれに尽きる。
作劇も素晴らしい。復興後の現場に実際に起きているのであろう生々しい問題を、時には圧倒的コミカルに、時には天才らしく脳天ぶんなぐる衝撃で、縦横無尽に描いていた。俺は特に４話目、仮設住宅での性の乱れの問題をコメディで見せきったこの話がむちゃくちゃ笑ったし好きだった。
この作品はクドカンがやりたい事をガチでやったらこうなるんだという衝撃作。「ふてほど」「離婚しようよ」「季節のない街」と見ると、メディアに合わせた大衆性の調整が自在すぎるマジで。一番人間を描いていたのはこれだったと思う。幸せとは主観であり他者が介入すべきものではないという生活の本質。というのは表で、この作品はもっと奥深い。仮設住宅の超過利用者は全員どこか何かの中毒者のよう。多くを望まないと言えば聞こえはいいけど、アル中とかセックス中毒とか共依存とか、どこかで倫理観を壊して現実を誤魔化さないとまともにいられない、不幸を誤魔化すことで思考停止しているような、しんどさ。個人的には太賀のキャラが印象的。家族に酷い目にあわされる太賀に対して、お前もう家出てけよとずっと思ってたけど、彼は家族に依存しているから自ら切り離すことなんてできないんだ。太賀のいい話に見せながら、実は精神的に弱者すぎる様を描いていて、これは凄まじいドラマだと思わされた。
もっともっと話題になるべき傑作だと思いました。
