たまこ

ペイン・キラーのたまこのレビュー・感想・評価

ペイン・キラー(2023年製作のドラマ)
3.5
1990年代、パーデュー製薬はオピオイドであるオキシコンチンの適応を慢性疼痛に拡大しFDAの承認に漕ぎ着く。これが後々アメリカをオピオイド危機に導くことを知ってから知らずか…。

オピオイドとはモルヒネを起源にもつ中枢作用のある鎮痛剤の総称で、痛みを和らげると共に多幸感をもたらすことで知られている。その中枢作用のために中毒性も高く、日本では原則癌性疼痛にしか適応のない麻薬である。

これがアメリカでどのように当局のチェックを掻い潜り一般の人にまで処方されるようになったかを、パーデュー側の人間の目線で描いたドラマ。

オピオイドを慢性疼痛になんて、少し薬学をかじったことがある者であれば中毒者を量産するであろうことは簡単に想像がつく。パーデュー社のサックラーももちろん創薬を学んできた人間なので、その危険性はわかっていたはず。当初は本気でオキシコンチンは中毒症状が出ないと信じていたとしても、年間何万人と言う死者を出し始めたら危機感を募らせ責任を感じても良かったはず。ところが彼らは中毒者を責め薬を売り続けた。

もちろんサックラー家もやばいけど、私はそもそも適応拡大を承認したFDAの功罪が大きいと思う。まだ贈賄等の取り締まりが緩かった時代に、欲に目が眩んだ人達により今のアメリカの惨状が生み出されたわけだ。

ここで一応断っておくと、日本で同じことが起きることは到底あり得ない。オキシコンチンは日本でも販売されているが、まず基本的に癌患者にしか処方が許されていない上、薬局では金庫に保管され毎回数をカウントし過不足を調べなければならないほど厳重に管理されているから。

あと、日本で普通に手に入る鎮痛剤はオピオイドとは全く別の機序なので敬遠しないでほしい。通常の鎮痛剤(NSAIDS)は中枢には効かないので中毒や禁断症状は起こらない。逆に痛みを我慢していると痛みの神経回路が出来上がり慢性化する。(アメリカ人がすぐに「オピオイド!」ってなるのに対して日本人の我慢の文化もマジ問題だと私は思ってる。)

製薬に携わる者としてはとても興味深いストーリーだった。

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