たけうち

広重ぶるうのたけうちのレビュー・感想・評価

広重ぶるう(2024年製作のドラマ)
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歌川広重の画業の生涯を、どこまでも人間くさい、平凡な人柄として描いているドラマ
絵の技術は優れているものの、個性や頭ひとつ抜きん出たもののない“つまらない”と言われてしまう絵師であった歌川広重が、いくつもの経験を経て名画をものにして、その絵が大きく画面に現れる演出はさすがにぐっとくるものがある
でもそれは絵力が凄いから画面に出てくるとぐっと来ちゃうってことであって、ドラマの筋書き自体はもたもたしてたり、モヤモヤするところは多くありました
火消役の侍と絵師との兼業だった経験が絵仕事に活きる描写の面白さとか、絵を出版したいと持ち掛けてくる絵屋役の演者さんの怪演など、良いところもあるのですが、
広重の奥さんが、あまりにも良くできた妻ぶりで、同性として見ていてすごく辛くなります

旦那の禄がそう高くないのに、欲しがる画材の代金を工面するために質屋通いをしていたり、同居する養親にいびられたりしても、そんな素振りは微塵も見せず、いつも朗らかに頼もしく支えてくれる妻の良くできた女房ぶりが、広重にもったいなさ過ぎて、イライラしてしまう
広重は妻の献身をちゃんと認識していない、苦労をかけていると自覚も薄いのです
火消しの仕事は几帳面にしっかりやってて、絵を描くときもそれに乗っ取ってしっかりきっちり描く、それゆえに面白味がない絵なのですが、でも妻はそんな広重の絵に心底惚れ込んでいる
仕事の出来や几帳面さ、細やかさを、どうして妻への関心に費やせないのだ
後半も進んでから、ようやく妻のその献身を理解して労おうとしても、時はすでに遅かったのだけど、歌川広重を支えてミューズとして啓示を与えて、喪失の痛みもたっぷり残した妻…って良く出来すぎてんな!
こんなすごい献身を受けたら、逆に辛くなってしまうと思うのだが、それとも、それでも、こんな妻にいて欲しいって思う人もいるのかな

他のちょっと出てくる他の絵師さんたちの演技は、イメージそのままでかっこいいです
特に北斎、ゴリゴリの北斎~! って感じで良かった 娘のお栄もしっかり印象的で満足です
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