渡邉ホマレ

ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界からの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

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人間的としてはHe suck!だけど俳優&監督としてはBESTなメル・ギブソン。彼が何故本作でコーマックという役柄を演じたのか。このリミテッド・シリーズを最後まで鑑賞するとその答えがよくわかる。…しかしこの役柄を喜んで演じるあたり、やはりメル・ギブソンはcrazyだ。

映画『ジョン・ウィック』シリーズの背景となる、コンチネンタルホテルを中心とした暗黒社会。
いわゆるギャング的でありながら、どこかファンタジックでもあり、極めてフィクション的でもある独自の世界観にフォーカスをあてた本作は、映画ではホテルの支配人として君臨するウィンストンの視点から描かれる。つまり、彼がどのようにしてこのホテルの支配人になったのか?

映画シリーズの中で言及されているように、ウィンストンが支配人となったのは約40年前。
1970年代のNYを舞台に、全支配人コーマックとの因縁と攻防が描かれる。

ただし、本作を「『ジョン・ウィック』シリーズの前日譚」と簡単に述べてしまって良いものかは、甚だ疑問である。
何故なら本作はむしろ、『ジョン・ウィック』シリーズよりもよほどわかりやすく世界観を深掘りしており、時代設定も背景も(誇張はあるにせよ)「ちゃんと」してる。

70年代という時代。NYという街の背景。そこに生きる人々の「いやこりゃ大変だな…」感。何しろ1973年のベトナム敗戦を引き摺るアメリカNYだ。登場人物全員が、当時の米兵の多くが患った精神的疾患のような…『タクシードライバー』や『ランボー』のような世界の中を彷徨っていて、その悪夢の世界をよりファンタジックに上塗りしたような世界観が、このシリーズなのだとわかる。

だからどちらかというと、『ジョン・ウィック』シリーズの前日譚というよりも、『コンチネンタル』の後日談こそが『ジョン・ウィック』なのだ。

『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』以降、急速にトレンド化した「劇中のBGMに過去のヒット曲を流せばいいじゃん」現象には辟易していたのだが、本作は別。当て方がお洒落で聴いていて嫌味がない。特にあるポイントで流れるテクノの名曲には思わずアガッた。

だらだらと何話もかけず、3部作でキッチリ金をかけて練り上げたのもグッドだし、序盤心配していたアクション面も最後までご覧いただければ納得すぎるほど納得。

何よりコンチネンタルホテルのシステムがもう…オモチロすぎる。クライマックスは思わず爆笑である。

さて、このままこの世界観は拡張していくのか?何しろまだまだ映画には直接繋がってはいない。たとえば『スター・ウォーズ』であれば、40年間というスキマを埋めに埋めようとするであろう。それをやるのかやらないのか…?ちょっとだけ観てみたいような。それでいて観たくないような…。

何しろ本3部作が、あまりにも良くできていたから。