長内那由多

JUSTIFIED 俺の正義 : クライムシティ デトロイトの長内那由多のレビュー・感想・評価

5.0
E1
こりゃ堪らん!巻頭早々、軽妙洒脱な台詞から、くんずほぐれつの人物模様までエルモア・レナード節が楽しめる犯罪ドラマ。2010〜15年にかけて6シーズンが放映された『JUSTIFIED』の続編だが、新章といった趣で前作を見ていなくても問題なし。

主演はティモシー・オリファント。しばらく忘れていた俳優だが、『ファーゴ』S4でブレイク当初のジョシュ・ブローリンやビリー・ボブ・ソーントンを思わせる渋みと危なさで目を見張り、本作でいよいよ脂が乗ってきた。なるほどこのシリーズで鍛えられていたのか!

巻頭のティモシー・オリファントと娘(実子ヴィヴィアン)のやり取りから一気に引き込まれてしまった。ここ最近、前作を見ていることが前提の某ドラマに我慢を強いられていたが、ダイアログと俳優、要はキャラクターが活写できていれば未知の物語は自ずと行間になるのだ。

E3
役者が揃った作品で、中でも親子役に扮したティモシー・オリファントと実子ヴィヴィアンの掛け合いはそうそう真似できない。実の父娘ならではの密接感に加えて、互いの才能を試し、引き出し合うような緊張感がある。達者なだけの子役では創れないケミストリー。

E4
兎にも角にも脚本。あれよあれよと転がっていくプロットと、暴力と紙一重のユーモア、洒脱なセリフが堪らない。原作はエルモア・レナードの『ぶちかませ!』と『野獣の街』のマッシュアップ。ショーランナー陣による手腕も大きい。

E5
いやー、堪らん。大きな動きはないエピソードだが、マイルス・デイヴィスとのセッション、そして栓抜きで爪の垢を取ったという2つの異なる挿話でキャラクターの覚悟を語り、役者のモノローグで見せる魅せる。ヴォンディ・カーティス=ホールのコク!

E6
なお新しい登場人物が現れて、雪だるま式に話が転がるスピードはさらに上がっている。とにかく脚本と台詞。いつも通り三下の悪役に見えてオーディオマニア、歩く暴力装置のような男をボイド・ホルブルックがノリノリで怪演。彼のベストワークだと思う。

完走
『ハイジャック』に続き、TVドラマの娯楽性へ原点回帰したポストPeakTVの1本。最終回まで転がり続けるプロット、エルモア・レナード節を濃縮還元した極上の台詞に身悶え。ちょっと気は早いが、今年のベストの1本に推したい。最終回では短い出番ながら、刑事役マリン・アイルランドも良かった。
長内那由多

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