sawak

下剋上球児のsawakのレビュー・感想・評価

下剋上球児(2023年製作のドラマ)
4.5
奥寺佐渡子×塚原あゆ子×新井順子×鈴木亮平が凡百の日曜劇場やスポ根ドラマを作るわけがなかった。信じてました。『VIVANT』よりよっぽど評価されるべき。

個人個人が際立ち、スコアも劇的に動かしやすい野球の“フィクション映え”に甘えない真摯な演出もよかったが、それ以上に無駄に長い歴史とそれゆえに管理的な学校教育とズブズブの高校野球界が陥りがちな「権威主義」に真っ正面から切り込んだ社会派作品の側面が大きい。

野球を愛する女教師の山住(黒木華)をめぐる数話は、数年前の甲子園でシートノックの補助で退場させられた女子マネージャーや、選手から性被害を受けた朝日新聞の女性記者などをめぐる問題を明らかに意識している。
南雲の“秘密”や犬塚が選ぶ結末も、免許や学歴といった権威・肩書きに縛られずに野球と向き合うべきという強い提言に他ならない。必要以上に「甲子園」を煽らない(クリフハンガーは常に「日本一の下剋上まであと○日」)点も、全てが「甲子園」に回収されてしまう高校野球へのアンチテーゼとして機能している。

地方格差や教育困難校に向けた眼差しも確かな、爽やか青春スポーツモノとしてのジャンル性と、確かな問題意識を持った骨太なテーマ性を両立させている稀有な作品。
sawak

sawak