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三体のQTakaのレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
3.3
元々、話題の中国発SF小説だったが、その映像化作品ということで、とても楽しみだった。
小説の話題にはなるべく触れずにいたので、どういう内容なのか前情報無しでこのドラマを視聴した。

たしかに、この小説は面白い作品だったのだということを確認できた。
近代中国が辿ってきた厳しい国内情勢は、それで十分引きつけられるものが有った。
そこに、科学的な要素が徐々に入ってくるのだが、敢えてなのだろうが、政治的な駆け引きを持ち込むことで見るものにスリリングな展開を見せている。
映像として表現されている冬の場面の厳しさに対して、親子や家族といった、救われる暖かさを見せることで、感情的にならないまでも、じっくり見させる流れをつくっていたように思う。

主人公が抱く人類文明への思いを明確に理解するところから物語は急展開を始める。
その理解の補助として、定番とも言われる書籍が登場する。
『沈黙の春(レイチェル・カーソン)』
人類が、その存在に否定的な見解を持つきっかけになる一冊として、現代社会への的確なまなざしをもつ為の一冊として、今なお読まれ続けている書籍だ。
今回、私も久しぶりに本棚から探し出し、手に取った。

もう一つ、物語の中心となるキーワードが有った。
『SETI( Search for Extra Terrestrial Intelligence(地球外知的生命体の探索))』
通称”セチ”は、宇宙に知的生命体は人類だけなのか?という問い答えるべく、電波望遠鏡で探してみようという研究だった。
宇宙人探しだね。
知的生命体からの信号を受け取れるのか?という疑問に対して、知的生命体の存在を計る”ドレイク方程式”とか、話題になっていた頃です。
このSETIが世界的に盛り上がったのは、”SETI@Home”の存在だろう。
電波望遠鏡で捉えられたデータは、当時研究者達のコンピュータだけでは、その処理が追いつかない状況だった。
そこで研究者が思いついたのが、世界中のパーソナルコンピュータを使うというアイディア。パソコンをインターネットでつないで、仮想スーパーコンピュータを作り出すということだった。
具体的には、自宅のPCに”SETI@Home”というアプリケーションをインストールし運用するのだが、個人PCだから普通に使うことに支障があってはいけないので、使わないところで計算を行うことになる。
ここで実にうまく考えたのが、スクリーンセイバーとしての実行だ。
つまり、席を離れている時に、宇宙人のシグナルを探す計算を行うわけだ。これならば、PCの利用にほぼ影響なしである。
こうして、SETIは世界中の注目となったのだった。

ドラマの中で出てきた、書籍、キーワードは、ここ50年あまりの間に、人類が経験してきたものだった。
映像表現としても、恐らく、中国国内で見ている人々にとって、同様に50年あまりを振り返る、そんな内容だったかもしれない。
とすると、このドラマは、単なる科学ドラマの域を超えているのかもしれない。
文学としても、哲学としても、近代史としても、幾重にも鑑賞できる内容かもしれない。
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