三畳

いちばんすきな花の三畳のレビュー・感想・評価

いちばんすきな花(2023年製作のドラマ)
4.2
もう、今の内気な20代30代はキラキラの恋愛なんかより「友達」がほしいんだ。
「イケメン・美女にある日突然愛される」のがこれまでのご都合主義ドラマだとしたら、「ある日突然、気難しい自分とわかりあえるツボを押さえたフィーリングが近い友達ができて、いつでも寄り道できる居心地のいい家が登場して、過去のぼっちの自分が救われる」のが今時の人間関係に疲れ切った私たちの願望。これが反映されたドラマだ!

SNSでよく共感を集めている「サイゼで喜ぶ彼女がいい」論が、そこに至るまでの関係構築の面倒くささをすっとばして手軽な果実だけ欲しがっていることの表れなら、
「すっぴんで気を遣わずに集合できる近所の友達がほしい」も同じ。
「こういうのでいいんだよ」のおこがましさと同じものを感じる。

ドラマの人物は互いを思いやることはしていた。
世の中に、自分と同じ気難しさと失敗を抱えている人はきっとたくさんいるだろう。
でもある程度社会性があって(働いている/同窓会に呼ばれる/結婚式に出席するレベル)、これまで出会えなかったレベルで気難しい人たちなら、あんな出会いは運命の恋以上にありえない、神様のいたずらとしか言えない。
別にドラマにリアリティを求めてるわけじゃなくて、むしろ個々のしんどいエピソードはすごくリアルだと思った。

ただ、人と向き合って関係を構築していくことで救われたというよりは、気が合うフレンズに出会えた時点でもう救いが確定したようなものだったから、あとはひたすらわかりすぎるあるあるが展開されるだけで、都合いいよなと感じたのかも。
こうやってちゃんと言えたらいいよなってのはわかりきってて、視聴者への新たな示唆があまりなかった。


椿家が、各々が頑張れる力をチャージできる拠点として機能し、みんなが一歩踏み出して世界と関われたのは良かった。

私の考察、椿家はインターネット上のコミュニティの象徴ではないか?

気の合う人しかいなくて、前置き不要で本題から語れて、仕事帰りに立ち寄って職場では言えないような本音を話せる、守られた空間。

そう考えれば導かれるような変な出会いも納得がいく。
みどりちゃんが昔に立ち上げて放置していた掲示板かメタバースの実写化なんじゃない?



みどりちゃん予想が一番私の中で盛り上がってて、分人主義×ジョハリの窓を体現するような松岡茉優を待ち望んでたので、以降ちょっと盛り下がってしまった。最終話の夫婦別姓とかも唐突感あって説経ぽかったなー。


こんなに言ったけど、「凪のお暇」を令和らしくバージョンアップしたようなすごくいいドラマだったと思う!
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