世間から身を隠す有名陶芸家と、それを偶然見つけてしまった青年が繰り広げる胸キュンラブストーリー。
エンタメのセオリーを馬鹿正直に突き進む王道BLでした。青磁のお茶碗のような作品です。
様々な女性向けコンテンツ要素を感じます。少女漫画、ハーレクインロマンス、時代劇含む韓流ドラマや男性KPOPアイドルまで、さながらエンタメの欲張りセットです。しかもいい感じの田舎のおばちゃんグループが出てきたりして、女性を楽しませようという気概に満ちていて、個人的には好印象です。
陶芸家の「社長」がヨン様っぽいところなんかは温故知新の味わいがありました。BLドラマにヨン様という取り合わせに驚きますがこれが意外と悪くないのですね。
歳の差カップルなので、ヨン様の方が若い父親にも見えて、2人がハグしているシーンも妙に心温まる風景になっていました。きっと家ではこうやって幼い息子に言い聞かせたりしているのだろうなみたいな。なんせヨン様なので、何をしていてもギラギラしておらず品が良いのです。お相手もまた切れ長の瞳が涼やかな、アイドルとして活躍してるらしき俳優さんなので、2人が並んでいると絵になります。
そしてストーリー。これも真っ向勝負。次に何がくるのか全部分かっていても、丁寧に作ってあるのでなんだか面白い。黄門様が印籠を出すタイミングはアレでなければいけないのと同じく、そこはそうでなければいけない時にそれがくる。
『サルでも描けるまんが教室』に「少女漫画は相撲だ」という名言がありますが、このドラマはまさにそれで、焦れったいやら切ないやらの仕切り直しをこれでもかこれでもかと繰り返しつつ、ここぞという時にちゃんと大技を決めてくれるのでまるきり相撲でした。
また、男女恋愛物においてヒロインの立ち位置にいたはずの青年が、恋人に対して情熱的な男性ぶりを発揮するくだりなどは、逆に新鮮味がありました。本来ならこれこそがBLドラマならではの醍醐味だったのではないかと。近ごろ量産されがちな男女物のコピーBLとの差別化の意図も感じられ、真面目にBLドラマを作っているのだなと思いました。サブカップルにはゲイ当事者の苦悩なども描かれており万事抜かりありません。
派手さはないけれど、見た後に2人の幸せがじんわり浸透するような平和な気持になれる良いドラマだと思います。エンタメの最大公約数を追求するのもまたエンタメだと思います。