シガーandシュガー

フィフティーン・ラブ~天才プレーヤーの告発のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

大怪我で選手生命を絶たれた女子テニスプレーヤー・ジャスティンが、元コーチのグレンから性被害を受けていたことを告発する。
ジャスティンは気が強く、引退後はやけっぱち気味だったこともあり、誰にも信じてもらえないまま証拠不十分でグレンは懲戒を免れる。
そしてグレンの被害者はまたも。。。

ジャスティンとグレンがメチャクチャ巧みな演技でグイグイ引っ張られる。
構成もスッキリしていて、あまり戸惑うことがない。
グレンの行状がいかにして暴かれていくのか、ジャスティンがどう立ち直っていくのかを楽しみに視聴できる。

非常にうまいと思ったのは、訴えた当初、ジャスティンは”グレンの成功を妬んでいる”のだとか、”引退から前を向けていないからだ”とか、性被害の告発の理由は”自身の被害妄想”と決めつけられていることに明確に反駁できない。が、挿入される回想シーンを追っていくことで、ジャスティンの思考の曇が晴れていくように感じさせ、ジャスティンが本当の意味で強くなっていくように思えたところ。佇まいも力強さを感じさせるようにさえ思えた。

回想といえば、その回想の果てに、彼女を引退させた手首の怪我の原因が視聴者に開示される瞬間、我々もジャスティンのショックと悲しみを知ることができるがその衝撃は大きい。少なくともジャスティンはグレンが好きだったんだろと思わされていたが、手首の怪我の真実を知るにいたり、やはりジャスティンもグレンにコントロールされていたのだとわかる。ひどい。
まだ未熟なジャスティンが自分を勝利に導いてくれるグレンに好意を持った点はなんら責められることではないし、そこにつけ込んだグレンが悪人だ。

ドラマではわかりやすく描いてくれているが、現実にはもっとわかりにくく、目くらましされてしまっていることが多いだろう。本当のことはわかり得ないことのほうが多いだろう。そう思うと暗澹とする。

ドラマは少女たちを前に向かせて終わる。それはとても良かった。
我々のいる現実も同じように、搾取されてきた人や今も搾取されている人たちに前を向かせてくれる風に満たされることを願ってやまない。