シガーandシュガー

殺人鬼ラウル・モート事件~英国警察史上最大の捜査のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

2010年にイギリスで起こった、元恋人・その彼氏、警察官の三名を銃撃したラウル・モート事件をベースにしたドラマ。
おそらく大きな脚色はないのだろうと想像できる地味な作り。
ラストのラウルと交渉人とのやりとりも全く盛り上がりを見せず、ラウルの最後も静か。
なんというか、ドラマにする必要あるのか疑問なくらい、淡々としていた。
犯人であるラウルが死亡した以上、この事件の肝は分からずじまいなので想像で補うしかない。共犯者とされる二名もラウルについてはほとんど何も語れなかったのだろう。
そうであるならば警察側、報道側などの苦悩や焦りをもっとフューチャリングしてもいいように思うのだが、どうも通り一遍の警察像・記者像しか出てきていない。警察の捜査担当や、報道する記者も、もっと掘り下げれば面白くなりそうなのに薄っぺらい。
ドラマの宣伝サイトに凛々しく立つ警察官二人は、正直あまり印象が強くない。犯人のラウル・モートでさえ、ドラマの中で影が薄い。それくらい、誰一人として深く掘り下げられていないドラマだと感じられる。
なので、ドラマにする必要がどこにあったのか、と思うわけで。

一つ引っかかるのが、ラウル・モートが一般市民に英雄視されていたらしいこと。それについてドラマ制作陣は異議をとなえるような作り方をしている(無実の三名を銃撃した人間は決して英雄ではない。当たり前。)。いうなればその点が、このドラマの制作意義になりうるかもしれないわけで、それならばその点は脚色してでも警察官や記者にもっと強く語らせてもいいのではないだろうか。被害者の、そして被害者家族の苦悩も掘り下げて描写していいのではないか。

ドラマのラストに、記述する形でその後の関係者について記す形は一般的だけれど、被害者の一人が自死していることはとても悲劇で、その悲劇は流されてしかるべきではなく、自死した被害者警官の苦しみと、ラウルを英雄視することへの異議は、もっと強調すべきではないのかと思った。