このレビューはネタバレを含みます
死を描くことで、生きることを描いてみせた
オレ何だかんだ生き延びるんじゃねえかって思ってるんだ
奇跡が起こったりしてさ
奇跡なんて、起こらない
つべこべ言わずに生きろよ
死が救いだとしか思えない妹に、否応もなく訪れる死に慣れることのない主人公が思わずぶつけた言葉
死ぬって怖い、だけど死にたい
ぼくは20年以上疎まれ虐められ弾かれ泣きながら生きてきたから
父の介護をして、家は荒れ果て、それは自分や母やそして父自身の心を写す鏡のようで
あとどれくらい、生きるの?
自分は人の皮を被った鬼だと思った
死と向き合っている人が誰かを生かそうとするとは限らない
綺麗な夜明けの空に鳥の群れが飛んでいる
かもめの鳴き声
波の音、踏切の音
生きるのをもうすぐ終える人々が、生きるのに躓いた人々をそっと励ます
人に迷惑かけてもいいよ、って伝えてくれる
引きこもってきた息子に仕事なんてすぐ見つかるはずないのに、自転車のチェーンがしょっちゅう外れるんだけど、直せたりします?って優しい人が言ってくれることもあるかもしれない
もしホントにいつか年取った時、もう消えちゃいたいとか死にたいとかそんな気持ちがなくなるなら
別に今死ななくてもいいのかもしれない
たとえどんな死を迎えても
わたしは私であなたはあなただ
奇しくもそれは和宮の台詞と重なりました
森下「大奥」と安達「お別れ…」
前者は人のために生きた人々の物語
後者はわたしはどう生きていくかを考える物語
死ぬって何だろう
それは、これからどうやって生きてこう、って言葉の裏返しなのかな、と今は思っています