りっく

お別れホスピタルのりっくのレビュー・感想・評価

お別れホスピタル(2024年製作のドラマ)
4.1
同原作者のNHK制作ドラマ「透明なゆりかご」も素晴らしい医療ドラマだったが、今回も負けず劣らずの高クオリティで全4話を一気に見せ切る力強さがあった。

自死を選んだ古田新太の存在と不在が本作の中心にぽっかりと穴を開け、その無力感や空虚さが通奏低音のように流れる。だが、そのぽっかりと開いた穴に飛び込むのではなく、患者たちが歩んできた人生の終点近くでケアラーの日常と交差し、醜の部分も含めたヒューマニズムがその穴を埋めていくような感覚があった。

死に際をどう美しく、悔いないように過ごすか。終活という言葉があるように、人生におけるライフプランの締めくくりまでを設計しなければならない風潮の世の中において、生きづらさや絶望を感じる人も少なくないはずだ。いつ来るかわからないその瞬間を、理想通りに迎えられる人間が一体どのくらいいるというのか。

人生の最終コーナーに差し掛かったところで、今までの人生を悔い改め、改心したところで、それは自己満足に過ぎないことも本作はきちんと描いてみせる。それを前提に、どのように死ぬかではなく、自分の人生に責任を持って「どのように生ききるか」という選択肢を提示し、人間味や人間臭さを全力で肯定してみせる姿勢が見事だ。
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