シガーandシュガー

実録 ドイツ硫酸殺人事件~女性刑事ネラ 執念の捜査のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

1980年代、毛皮販売人のドアマンという男が、上司の内縁の妻を誘拐・監禁・身代金を要求した罪で裁判を受けていた。が、ドアマンは言葉巧みに自分の罪を押し隠し、軽微な罰にとどまってしまう。

この件で、誘拐された女性の内縁の夫へのケアを担当したネラは、殺人課へ移動した後にドアマンが他に二人の女性を誘拐したのではという疑惑を持つ。ネラは同僚や上司の無理解と、ドアマンの異常人格に抗いながら、事件を解明していく。

まず、犯人であるライク・ドアマンが凄まじい。演じている俳優が巧すぎて、行いのおぞましさが何倍にも増幅されて気持ちが悪くなってくる。女性は被害者の恐怖がリアルに肌身に感じられるのではないか。それくらい恐ろしい演技だった。演者が(被害者役も)病んでしまわないかと心配である。しんどいけれども見どころの一つ。

そして女性刑事のネラ。女性初の殺人課配属というだけあって、小柄でも根性が凄まじい。ゴリゴリの女性差別を受けながらも絶対諦めず、被害者家族にも寄り添い、ドアマンの異常さに心身ともに追い詰められながらも絶対に折れない。ドラマとして誇張されているかもしれないけれど、この強さは間違いないだろうと思う。本当に感服したし、眩しかった。
ネラの強さに協力する監察医と新人刑事の存在も良かった。実際はどうだったか分からないけれど、ドラマとしてこの二人がいたことでホッと出来た。女性が社会で活躍することはあまりにも壁が高い。

ドアマンの犯行(過去)と捜査(現在)、さらにドアマンの自己弁護(過去)を行き来するので混乱してもおかしくないけれど、構成とカメラワークをできるだけわかりやすくしているため、二話以降はストレスがない。
セピア色をおびた画面は優しく、青銅色の画面は恐ろしく、視覚的にわかりやすいドラマだった。

エンディングはナレーションベースで登場人物のその後が補足される。
ネラが殺人課をすぐ移動した理由は、女性軽視の時代が理由だったとは思いたくない。が、ネラの心身にダメージがあったとも思いたくない。いずれにしても、どこにいても、ネラは全力で生きたのだろうと確信できる強い女性刑事だった。何歳だったのだろうか、最後は安らかな心持ちだったと願いたい。

女性刑事の奮闘は「刑事カレン・ピリー 再捜査ファイル」も面白かったけれど、こちらは事件が陰惨すぎるのと犯人が異常すぎるので、より胃の腑が重くなるドラマが好きならこちら。
非常にしんどいが、いいドラマ。