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松本清張ドラマスペシャル ガラスの城のnorisのレビュー・感想・評価

3.0
#波瑠 だからと少し期待したが、前夜の「顔」と同じ「テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマスペシャル」なので似たりよったりの出来だった。CMもろとも本編を飛ばし見してしまったのか、編集がおかしいようにしか見えなかった。殺された部長は事務職の部下から300万も借り、さらに退職金もすっからかんで、一体何に遣ったというのか…

とはいえ、中盤で語り手を木村佳乃から波瑠に変える原作の2部構成は活かされていたので、なんとか最後まで見た。

前半は木村佳乃の語りによって、波瑠や仁村紗和、川島海荷をはじめとする4人の一般職と、木村と蓮佛美沙子という2人の総合職が、会社で働く女の生き方を正確に値踏みされる。

会社名や登場人物が実名の大胆な日記を一部上場企業のバリキャリが、PCですらなく、キャバ嬢のようにスマホで記録しているのは違和感あるのだが、このくだりはそれなりに興味深く、高給取り(と何度も念を押される)のわりに誰ひとり仕事らしい仕事をしていないのが笑えるし、カイシャというものが原作時点の昭和からさほど変化していないかのように描かれる。

しかしそんな木村も見抜けなかった人間関係があり、さらに隠しごとをしている語り手という叙述トリックもあって、後半の語り手である波瑠によって語り手自身が裸にされるところが本作の醍醐味と言える。

1962年に雑誌「若い女性」に連載された原作では、前半(第1部)が「手記」、後半(第2部)が「ノート」とされており、仕事では目にも留めていない女子社員が実はそうしたものを書き綴っているという設定には、小説的なロマンというか凄味があったと思うが、それをキャバ嬢的なアプリ日記として設定したのは何か無理筋を感じる。拭いきれない時代錯誤感はそこに端を発していると思う。
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