カゼ

ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-のカゼのネタバレレビュー・内容・結末

1.5

このレビューはネタバレを含みます

五話まで見ました。

絵に描いたようなテンプレなジュブナイルものです。
大人が見るには相当きついと思います。
かといって、子供向けといえば子供向けなのですが、子供向けとしてもあまり魅力がありません。(また、たまに流血暴力があるので見せられません)

何か既視感があるなと思ったのですが、
九十年代、実験的なSFファンタジードラマみたいなのをNHK教育テレビでやってたのに似ているなーと思いました。(雑さの印象として)

良い点

・異世界を行き来するジュブナイルもの、かつ日本を舞台としたドラマは今までになかった(ありましたけど、そんなにはない、という意味で)
・アニメと実写の融合?という試みに、既視感はあれど挑戦を感じる。


悪い点

・人物に共感が出来ない。
まず、主要人物にある葛藤・・・負の部分が、共感ができません。

現実世界側の主人公である二人の人物は、自身や周りから、
「現実はつまらない。でも現実を見るべき。夢を追うべきではない。周りは夢を見させてくれない。やりたいことはやれない。できることをやるべき。現実を知れ」
といったネガティブなワードに晒されています。
現実を諦観するも、どこかで夢を信じたい、そういった人物・・・のように見せたい感じの人物です。

まず、これが圧倒的に共感出来ませんでした。

この作品が九十年代のものならともかく、現代ではそういう事を言い諭すような奴はむしろ少数だからですw

例えばヒロインの友人ソンは、漫画家を目指していますが、それゆえ勉強に身が入らず成績が悪いようです。
それを兄が叱責し、「現実を見ろ。漫画の才能はお前にはない」
と言うのですが・・・
漫画が飽和しきっているこの時代、そして発表先も無数にあるこの時代では、いきなり専業漫画家で食っていける訳がありません。普通、他に仕事を持ちながら、バズるまで漫画を描き続けます。それが令和の漫画家のスタンダードです。どんな漫画がバズるかも全く分かりません。その辺のリーマンが描いた日常系ブログ漫画が大ヒットするし、かと思えば期待の漫画家が連載もろくに続けられず終わっていく時代です。
九十年代ならともかく、兄の叱責は見当違いだし、弟の夢の追い方も見当違いです。落書きするくらいならノートに設定書き溜めとけよ。さっさと漫画描いてネットにでもいくらでも投稿しろよ!と。
要するに、ソン君は「夢にひたむきなのにそれを押さえ付けられてる」というキャラであるべきなのに、「漫画家の夢を甘く見てる」キャラにしかなっていないので、共感が上手く進みません。


ヒロインもヒロインで、
「現実を見るべきである」「私は周りと違う」と心を閉ざし気味の子で、頑なになった原因は母にまつわるトラウマのせいではあるのですが・・・
周りとの疎外感を感じさせる為のシーンが幾つかあれど、シナリオ的には、シンプルに空気が読めない子にしかなってなくて・・・
本当であれば「社会に対して虚しさや疎外感を感じ、自分の価値を見出だせない少女」というキャラであるべきなのに「斜に構えちゃって自分から壁を作っておきながら、言える奴にだけ陰口を叩く陰湿な奴」になっていて、共感が上手く進みません。

異世界の主人公タイムは、キャラとして描きがいい加減で、とってつけたように無能落ち込ぼれキャラで、とってつけたように熱血キャラで、とってつけたようにヒロイックで、
憧れはもちろん、共感が上手く進みません。後から彼の人格形成の理由を与えられるのかもしれず、そこはまあ良いのですが、そもそも彼の行動とセリフがイマイチ噛み合ってなくてモヤります。

アクタについても、匂わせとか物語の伏線を貼る為に詰め込んだのでしょう、行動に脈絡がなく、とってつけたようなシナリオをこなして、
とってつけたようにひねくれ、とってつけたようにタイムを成長させる因子キャラになります。

アクタの友達の女戦士も、唐突に喧嘩腰というか、お前は足手まといだとタイムに言う「ためのキャラ」にしかなっていません。

天才てれびくんの劇中ドラマを見ているかのように、
全体として「キャラが薄い」「魅力が薄い」「とってつけたような役割を演じるキャラ」です。

「夢見るな現実を見ろ」って・・・これが90年代ならそれで真っ当な抑え付けだったんですけどねえ・・・エリートが就職できない時代を経て、今は空前絶後の人手不足時代、ゲームやアニメや漫画が巨大産業として世界的に認知されて久しく、ユーチューバーが億万長者になっちゃったり、ポンと作ってバズった何かが大金を生んでしまうこの時代で、それって見当違いっつーか、
家の特殊な事情があるならともかく、賢明な大人ならせいぜい「何が起こるか分からん時代だから、常にアンテナ張っとけ!とりあえずは学歴取っとけ!夢あるならさっさと挑戦しとけ!」くらいなもんですよねえ・・・w


・伏線があるにはあるが、今日日の児童文学にも無いようなどシンプルな古いテーマを語ろうとしているように見えるので、追っていくのがシンドい。

深く学びがあったなあ、と思うのは、
スリラーやサスペンス、ミステリーのような、伏線、謎掛け、匂わせ、というのは、
大前提として、
次はどうなる!と思わせるだけの「魅力」がそもそも無いと駄目だという事です。
伏線や謎掛けは、あくまでも作品にとっての「スパイス、調味料」であって、

作品自体に魅力を感じなければウザく、分かりづらいだけであり価値をもたらさないんだ、ということです。

本作のシナリオ、あるいは世界観は、基本的に「あるある」で構成されています。

ファンタジーが粗製濫造されまくっている日本においては最早既視感しかありません。
いや、というかこれについては九十年代でも「ああ、そういう感じね」となったのではないでしょうか・・・
エラゴンかよ・・・とか思ったというか、今さら浮遊島推しかよ・・・というか、
全体として90年代感が半端ないというか、
今更その世界観で日本で売っていくのは厳しいだろうと思わざるを得ませんでした。

十二国記とかふしぎ遊戯とかを実写化したほうがなんぼか魅力があったのでは・・・プロダクションIGだってさんざんっぱらやってきたと思うんですけど・・・

脚本に、脚本家しかいないんじゃないかなあと思います。
ファンタジーの作りが古くて、余りにも懐かしい。せめて設定というか世界観作りに、ファンタジー作品の作家だのなんだのを用意したほうが良かったと思います。素人では引き出しには限界があります。

一話でガンガン世界観説明、キャラ説明に終始したのも痛かった・・・
そうではなく、もっとドラマを展開して、説明抜きにハラハラドキドキさせないと、誰も付いてきてくれません。
ファルシがパージしてコクーンして・・・みたいな訳分からん造語を使いまくるハイファンタジーの説明なんて覚えてられませんし、面白いかもわからないのに覚えたくもないからです。

異世界語を頑張って考える前に、物語が魅力的になるように頑張るべきです。


・・・・・あくまで現状の懸念ですが、
どうも本作はこのまま行くと、
いまさらネバーエンディングストーリーをやる気なのかと深い危惧を覚えています。

もしそうなら、勘弁してほしいです。
さすがにこんな浅いテーマな上、いまさらネバーエンディング・ストーリーの展開を見せられたら厳しいです。


「現実を見ろ、じゃない。夢を見るんだ!」
「出来ることじゃない、やりたいことをやるんだ!」
「キミが夢に思い描く世界が、キミが歩む現実そのものなんだ!」
「空想は素晴らしいんだ!」
「諦めるんじゃない!信じ続けるんだ!」

もし万が一、こんなとってつけた薄い哲学で長時間のドラマを終始されたら、80年代90年代でも刺さるか分かりません。いや、刺さらないでしょう。

この哲学が悪いというんじゃないんです。
そうじゃなく、
映画ドラえもん(3Dではなく)ですら、それを当然肯定した上でもう一捻り深掘りしてる、という事です。

・アニメ(特にJアニメ)と実写は食い合わせ悪いと再確認した。

基本的にロトスコープ的なアニメをさせる欧米のアニメなら、まだ実写と噛み合うのでしょうが、
Jアニメのようなリミテッドな環境で生まれた省略と誇張の表現だと、
やはり細かい演技が省略されているので、別物感が半端ありません。

それ故に設定が雑だなと感じます。
実写版アクタをタイムが初めて見て「アクタだ!」とわかったあたり、異世界の人達的には、自分達を「実写の姿」で認知してるんですよね・・・?w

ちなみに・・・何でそもそもアニメと実写を共生させたか、という作品としての意図なんですが・・・
私としては「ネバーエンディングストーリーにするつもりだから」
ではない事を祈るばかりです。

ネバーエンディングストーリーも今さらだけど、
それの亜種の映画ドラクエ5も散々でしたよね。
今さらなんですよこのオチ。
ギリギリ90年代までです。


・全体として、とにかく、雑で、荒くて、既視感があり、キャラが役割を演じているだけです。
こんな絵に描いたような前時代的な「ジュブナイル」もの、
どの世界なら流行るのかよくわからないのですが、
レーティングがきついアメリカでなら、子供達に受ける算段があるということなのでしょうか。

それとも、5話以降では変わるのでしょうか?
だとすれば、遅すぎると思いますが・・・
カゼ

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