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マエストラのsoopenのレビュー・感想・評価

マエストラ(2023年製作のドラマ)
4.0
イヨンエの持つカリスマ性が、孤高の女性指揮者という役柄で、鋭く輝く本作。見所はズバリイヨンエ。彼女の一挙手一投足に、誰もが惹きつけられる。

ヒロイン、チャセウムの高慢とも思える物言い、他人の助力に頼らない頑なさ、仕事の上では一歩も引かない強靭な精神力…しかしそれは、内に秘めた不安を隠すためでもあった。絶妙なバランスの上に指揮者として君臨する彼女を支えるのは2人の男。1人は夫、1人は過去の男…

潰れそうなオーケストラの再生を手掛けては離れる、を繰り返す指揮者チャセウムが次に向かう所は母国韓国で、解散寸前の漢江フィルハーモニー。長年海外で活動していたのには母国には帰りたくない理由があったからだ。しかしその過去とも向き合う決意をしたセウムに、待っていたものはオーケストラの団員との不和、信じていた夫の浮気、元カレの出現による仕事への支障、そして最大の難関である母親…嵐のように次々にやってくる困難な事態に加えて、殺人事件が起きる。犯人は誰なのか?誰も彼もが怪しく見える中、チャセウムにも忍び寄る影…

本作は音楽がベースですが、サスペンス色が非常に強く、複雑に絡み合った糸を解いて、自分なりに推理していく段階がとても楽しかったです。追い詰められていくチャセウムの緊迫感、安堵しては裏切られ、攻撃は最大の武器!と先手を打つも問題解決には至らず…と空回り…そんな状況では誰しも疲れ切ってしまう。しかし頭の良い彼女は、違和感を見逃さない。周りの手を借りながら、真実に近付いていく場面は探偵さながらで、ミステリー好きには大いに楽しめる作品です。

ただ、音楽的にはこのフィルハーモニーに、そんなに成長を感じられず、ドラマの進行上、楽器をスプリンクラーでダメにしたり、バイオリンを叩き壊すシーンなどもありで、かなりショッキングでした。そんなシーンが必要だったのか?とはいえ、最後に演奏した曲は素晴らしく、イヨンエが指揮とバイオリンの演奏の練習に1年も準備期間を設けたのも納得です。

キャストは、唯一の?若手イケメンに、キムミンギュが秘書役に起用されていたのが目の保養でした。ファンボルムビョルという、一度聞いたら忘れられない名前の俳優も、難しい役をこなしていたと思います。あとは、ティンパニー奏者のヤンジュンモ!彼はミュージカル俳優で、何年か前に日本でのレミゼラブル公演のジャンバルジャン役を、客演でなく演じていました!(観てないけど)

原作がフランスドラマの『Philharmonia』という作品らしいので、いつか見る機会があれば見比べてみたいです。
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