シガーandシュガー

アニエス失踪事件~37年間におよぶ母の愛と執念の物語のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

1時間✕4話で30年という長い間を描く。
実在の事件を扱っているためか、想像を入れ込みすぎたり、センセーショナルに描き過ぎないことにしているのかもしれない。全体的に淡々としていて映像もクリアではなくぼやけている。

事件の発端は、カジノを経営するルルー一族が経営難に陥り、野心を持った貧しい弁護士アニュレを経営状態確認のために雇い入れたこと。
アニュレが成り上がりたい欲望を抑えきれず、ルルー一族から経営参加を拒否されたことを逆恨みし、一族の末娘アニエスを籠絡して思うままに操る。
アニュレが信じるに足る人間ではないことを見る目のある人間はわかっており、被害者になってしまったアニエスは寂しさを埋めるために耳を閉ざしてしまった。

アニエスは結果、行方不明とされ、アニエスの母は事件であることを訴えるがアニエスの遺体は出ず、アニュレを追い詰める材料も弱かった。
そこで諦めず30年も協力者を求めてついに協力者を得、アニュレをついにはとらえることが出来た。

見どころはルルー一族の30年間かと思っていたけれどあまり描かれていない。一番の盛り上がりは、被疑者アニュレの一家の苦悩だった。
夫の犯行を知りながら沈黙する元妻、次男。父親の言動の端々に決定的なものを見ながら耐え続けてきた長男ギョーム。ギョームは自分が結婚して子供を設けたことで、重い真実を隠すことに耐えられなくなる。
このギョームの証言部分がクライマックスで、ギョームに守りたいものが出来、自分の過去を整理して理解できるようになったことで事件が解決に向かったわけだけれど、ギョームのあり方は人として救いがあった。
それに、犯人のアニュレは最後まで嘘を突き通すつもりだったし本当にそらぞらしい男だったので逃げきれなかったことも良かった。

遺体が最後まで出なかったのは驚いたけど、実際はどうだったのか気になる。完全なる物証がなくて息子の(かなり具体的だけど)証言だけで懲役20年になってしまうのはちょっと怖いような気もしてしまう。30年間、警察も司法機関も忘れていなかったし、たくさんの状況証拠と証言の積み重ねだと思えばもちろんおかしくない。ただ実話だとしたら確実な物証をも合わせることで冤罪のおそれを避けてほしかった。