シガーandシュガー

エクスプレス誘拐特別捜査チームのシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

またも邦題のせいで、特別に訓練された精鋭チーム、あるいは落ちこぼれチームが誘拐をスピード解決する警察が舞台のクライムドラマかな、と思っていたら毛色が違ってた。

スペインのドラマ。
コロナパンデミック後、エクスプレス誘拐と呼ばれる短時間で行われる凶悪犯罪が増えていることを題材にしている。
この犯罪が短時間であることを利用して一話完結ドラマで見せるものかと思っていたらそれは三話くらいで終わり、あとは主人公バルバラの長女グスが関わる事件や、バルバラ自身のトラウマがドラマを作っていく。誘拐が軸であることは変わらないので物語はブレない。

この主人公バルバラは犯罪心理学者であり、自身が誘拐され足の指を一本切断された過去を持っている。
警察を辞めた後、保険会社セントラルリスクの女社長オルテガにスカウトされ、無法な誘拐捜査チームを率いるようになる。
メンバーは、移民の犯罪者、弱視の初老女性、かつてオルテガの部下だったドローン使いの女性、ハイテク機器への接近を禁止されている元ハッカー、そしてオルテガ社長の腹心の部下という6名。
誘拐事件をアンダーグラウンドで解決していくが爽快感はなく、エゲツない展開で物語がそれこそハイスピードで進んでいく。
展開の速さのせいだけではなく、秘密もいくつもあり、見ているこちらはついていくのがやっと。

日常は超特急で流れていき、家族さえも疲弊していく、というナレーションがあったと思うけれど、その通りに主人公バルバラの悩みは超特急かつ深度も深く、誘拐されたトラウマ、夫婦間の亀裂、娘二人の問題(これもヤバいレベル)、そしてエクスプレス誘拐捜査チームが警察に追われていることなどなど、見ているこちらが耐えられないくらいに追い詰められている。それを細い糸一本で正気を繋いでいるような、あやうくも強く、美しいバルバラを演じているマギー・シバントスがいい。

おそらくこれはシーズン1で、今回、バルバラが誘拐された理由はわかる。が、わかっただけでスッキリはしない。なんだったら新たな陰謀にバルバラ(と家族)は巻き込まれていくクリフハンガーで終わる。最後までトップスピードである。

で、シーズン1の最終回には、ちょっと演説めいた、制作陣からのメッセージのような場面がある。それは我々が日常で目にするニュースであり、SNSで発信されている悪意であり偏見であり、我々がいかにそれら恐怖にさらされているのかを再認識させられる。ドラマとしては蛇足かもしれないけれど今後の展開によっては名場面になるかもしれない。

シーズン2が待ち遠しいし、制作陣がどうこの話をまとめるのか見届けたい。