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天皇の料理番のmaのレビュー・感想・評価

天皇の料理番(2015年製作のドラマ)
4.8
癇癪持ちで物事が続かず、親からは「のく蔵」と呼ばれる福井の青年。ひょんなことから西洋料理と出会い、シェフになるという途方もない夢を追いかけ、叶え続け、明治から昭和までを駆け抜けた姿を描く実話。

実際は秋山徳蔵氏だけれども、物語の細部はフィクションのため、作品では秋山篤蔵が主人公となっている。



年末あるある、ドラマ一挙放送で視聴。

重い病気を抱える兄役を演じた鈴木亮平さんの凄まじい役作り(半年で20キロ落としたらしい)は当時から話題になっていたので知っていたが、そのほかの事前知識はまったくなかった。なぜ一流ホテルやレストランのシェフではなく天皇の料理番なのか?ということが分かったとき、時代を感じた。

女性がまだまだ男性の後ろを歩かねばならなかった時代だとは思うけれど、篤蔵が心を通わせた俊子はほんとうに素敵な人。強くやさしく、篤蔵の良いところも悪いところもすべて理解して受け止めた上で、精一杯の最善を選び取る人。

篤蔵はと言うと、ほんとうに癇癪がひどい。すぐ叫ぶし手が出るし、包丁を人に突きつけちゃったこともある。勢いに任せて「俊子のため」を「俊子のせい」と怒ったときもあった。仕事に熱心なのはいいけれど、妻が俊子だったから、俊子との愛が互いに伝わっていて、信頼関係がきちんとあったからこそ成立したこと。

篤蔵の行く先にはだいたい底意地の悪い人がいて、蹴られたり意地悪されたり、尊厳を叩きのめされたり。観ていて嫌な気持ちになるようなシーンも多いぶん、篤蔵がほかの人と仲良くなったり、やさしくしたり、されたりが沁みるし、精神の成長を感じられると、熱い思いで胸がひたひたになった。

篤蔵に対してはかなり複雑な気持ちだったはずなのだけど、不思議なくらい、何度もぼろぼろ泣けてくる。最終話の鴨、いちばん号泣した。
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