ブタブタ

64(ロクヨン)のブタブタのレビュー・感想・評価

64(ロクヨン)(2015年製作のドラマ)
5.0
実験的警察探偵小説(ドラマですが)
極めて上質なドラマで全5話の大作。
『シン・ゴジラ』の前年にこんなドラマやってたとは殆どの人が知らないのが残念。
シン・ゴジラが「ゴジラ」という突如出現した巨大な脅威を巡る群像劇でテクニカルスリラー(造語)
で『64』はたった7日で終わった昭和64年といういつまでも時間が停止した様にそこにある、時代の空白期間、そこで起こった余りに理不尽なそして謎だらけの未解決誘拐事件を中心にまるで「64」という言葉そのものが何かの意思でも持ってるかの如く人々を呪縛し苦しめ、そして新たなる犠牲者を求めて再びその邪悪な姿を現し始める。
しかしその実態は闇の向こうで最後まで真の正体を現す事はない。
いや~何か京極夏彦『百鬼夜行シリーズ』だな~。
毎度毎度言ってますが何で「こんな感じ」で「目に見えない何か巨大で邪悪な存在」としての「妖怪」を映像作品で、京極夏彦小説の実写化が出来ないんだろ。

原作は警察小説なのに主役三人中二人が後でその警察にタイーホというね(笑)
ピエールさんは復帰したけど、これにより再放送や配信等二度とないと思われる。
(DVDで普通に見れますが)

たった7日で終わった昭和64年。
その間に起きた某D県地方都市を舞台にした少女身代金要求誘拐未解決事件、通称『64』
嘗て刑事課で『64』事件捜査にあたった三上(ピエール瀧)は今は広報課に移動し広報官となっており、ある事件の実名報道を巡る記者クラブと県警の板挟みとなり、その対策に追われていた。
そして『64』事件から14年たった今、全く同じ少女誘拐身代金要求事件が起こる…

そして同時進行する《警察》という官僚組織内部の複雑怪奇なパワーゲームはテクノスリラーでもある。
降って湧いた様な警察長官の県警視察とその真の目的、その裏で暗躍する二渡調査官(吉田栄作)と接触した三上は『64』事件が再び動き始めているのを知る…

画面の真ん中に「64」「匿名問題」「ロクヨン専従捜査班」「幸田メモ」とかセリフで言った後に小さく出るグラフィック、空から地上の都市を舐めて行くカメラのオープニングとか美術や演出も凝ってて寒々とした地方都市の風景、そこで起こった未解決誘拐事件「64」の亡霊が再び現れて、トリアー『エレメント・オブ・クライム』安部公房✖️勅使河原宏『燃えつきた地図』みたいな、架空の都市という迷宮を舞台にした不条理・幻想サスペンスの感も。
「警察」というコレまた不条理な巨大官僚機構に翻弄される主人公はカフカの『審判』いつまで経っても辿り着けない「64」という幻影の存在は『城』、かようにカフカ的な不条理スリラーでもある。

予告の「NEXT64」てロゴ、ボイパででゅんでゅんでゅんちー♪♪て流れる中で短いカットとセリフの応酬、この予告の実験映像的編集もいい♪♪

最終話が兎に角凄い。
全ての点と線が繋がり(最近流行りの「伏線回収が見事」て言い方はキライヾ(。`Д´。)キライ)怒涛のクライマックスへと流れ込む。
配達トラックに偽装した捜査指揮車(正に走る秘密基地みたいでかっこいい)に乗り込んだ三上と松岡捜査一課長(柴田恭兵)は新たな誘拐事件、娘の身代金を車で運ぶ被害者父(尾美としのり)を追ううちに又「64」へと戻っていく。
「この車は今『ロクヨン』の捜査指揮を取っている」

それから本作のスーパーヒロイン(笑)山本美月演じる美少女婦警・美雲詩織の掃き溜めの鶴的なその聖性な佇まい、頑張ってるのは分かるけど基本役に立たない。
三上は美雲をあんまり現場に出したくない、何か終始困ったな~( ̄ω ̄;)みたいな扱いしてるのが可愛い(ピエール三上が)
これが土屋太鳳や有村架純とかだと仕事出来そうな感じになってしまうので山本美月ってキャスティングは最高である。
この作品が埋もれてしまうのは残念。
更に悪い事に榊英雄が出てる(性犯罪者が二人…)
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