tetsu

十九歳のtetsuのレビュー・感想・評価

十九歳(2018年製作のドラマ)
4.1
FODに登録しているとみつけたので、鑑賞。

片親である母と不和を抱える19歳の美大生・嬉子。
親子で祖母の家へと帰省した彼女は、そこで居候する昆虫学者・青馬と出会う。
かつて、母が彼に思いを寄せていたことを知った彼女だったが、少しずつ、彼に惹かれていき……。
少女が大人になる瞬間を描いたひと夏の物語。

なんといっても、岸井ゆきのさんが素晴らしい。

『前田建設ファンタジー営業部』では、ハツラツとした性格で恋をしている姿が魅力的だった彼女が、本作で演じているのは、真逆とも言える「陰」を感じさせる女性像。

周りの世界を達観しながらも、どこか幼心を捨てきることが出来ない彼女の姿には、演技の幅と同時に"女優・岸井ゆきの"さんの真髄を感じさせられました。

また、彼女の揺れ動く心情を、抑圧した岸井さんのモノローグによって表現している部分も印象的。

大人を見下すようでいて、自分をかまってほしいと感じている主人公を、文学的なセリフ*と岸井さんの深い失望を感じる語りによって、見事に表現されているのが素晴らしかったです。

*劇中に登場する「2つの眼球」という言葉、蝶の標本という「死」を感じさせるアイテム、純粋さと残酷さを併せ持つ主人公など、本作に登場する諸要素には、どこか『眼球譚』を思わせるようなセクシュアル的な妖艶さと、幼さが持つ狂気性を感じました。

かなり知名度の低い単発ドラマではありますが、"女優・岸井ゆきの"さんを語る上では、確実にはずすことは出来ない、隠れた単発ドラマの名作だと思いました。

参考
眼球譚 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%BC%E7%90%83%E8%AD%9A
tetsu

tetsu