ウシュアイア

鹿男あをによしのウシュアイアのレビュー・感想・評価

鹿男あをによし(2008年製作のドラマ)
4.4
2000年代の隠れた名作ドラマ。
万城目学の奈良を舞台にした考古学ミステリーファンタジー小説が原作。

人間関係のトラブルで東京の大学の研究室を追われ、女子校の教師として奈良に赴くと、神の使いの鹿から使命を託されるというお話。

鹿からのミッションは京都の狐の使いから天変地異を引き起こす鯰を鎮める儀式に使われる「目」を受け取り鹿に届けること。鹿から「目」は「さんかく」と呼ばれている、また大阪の鼠と奈良の鹿は反目しており、鼠は鹿に嫌がらせのため鹿の儀式を邪魔をしようとしているということを知らされる。主人公は同僚で相棒の藤原君ととともに、赴任早々に主人公に反発する生徒堀田イトや狐の使いと思しき京都の姉妹校の女性教師「マドンナ」こと長岡に翻弄されながら「目」の行方を探す。

「目」とはどんな物でその行方はどうなったか、狐の使いと鹿の邪魔をする鼠の使いは誰か、堀田イトが主人公に反発する理由は何故か、という謎解きミステリがストーリーのメインストリームとなっており、その他個性豊かな登場人物も多く、原作に沿った部分だけでも十分面白い。

原作のテイストは主人公がこじらせ系で関西が舞台ということで『四畳半神話体系』に似ているかもしれない。また、第一話の主人公の奈良の女子校の赴任のエピソードは夏目漱石の『坊ちゃん』のオマージュもみられる。一方で、原作では主人公の相棒の歴史教師の藤原君は男性だが、綾瀬はるか演じるドジかわいい女性教師にしてラブコメ要素も付け加えられ、謎解きとうまく絡んでいたように思える。

そして奈良と一部京都の名所でのロケも旅心をくすぐられる。

キャスティングも魅力的。当時22歳の綾瀬はるかはもちろん、物語の鍵を握る女子生徒堀田イト役が多部未華子で、ほぼ無名に近かったが恐ろしく目力が強く存在感は抜群であった。また、紳士的ながらも序盤から怪しいそぶりを見せる「リチャード」こと教頭の小治田(おはりだ)役は児玉清、鹿と鼠の吹き替えは大御所声優の山ちゃん(山寺宏一)と戸田恵子。

そして一度聴いたら頭から離れない佐橋俊彦作曲のインストルメンタルのエンディングテーマも名曲。
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