Larx0517

ヴェラ~信念の女警部~ シーズン1のLarx0517のレビュー・感想・評価

4.0
いけすかない女。
とてつもなくコミカル。
これを同時に”同居”させる女優は、そういない。

ヴェラ・スタンホープを演じるブレンダ・ブレシンを初めて見たのは、映画『リバー・ランズ・スルー・イット』。
ブレイクする前のブラット・ピットの母親役だった。
さらに強烈な印象を残したのは、映画『プライドと偏見』。
シリアスな役でリアリティを出すのは容易だが、この作品のコミカルな役ながら、そのリアリティは圧倒的だった。
監督のジョー・ライトも、コメンタリーで絶賛していた。

彼女の演技のすごいところは、彼女の演技が何層にもなっているところ。
口に出して言っていること
頭のなかで考えていること
本人が意識していない深層の感情
普段は意識して、コントロールしている。
時折、それが不意に”浮上”する。
または透けて見えたり、隠れたりする。
そういう女性を、さらに演じる。
人畜無害で愚鈍な”おばさん”の外見にだまされてはいけない。

シリーズの舞台は、イングランドの北東端、スコットランド国境地方に位置する
ノーサンバーランド。

e1: 城跡はダンスタンバラ城(Dunstanburgh Castle)。
牧草地のなかに建っているように見えるが、現在はゴルフコースのなかにある。

ラスト、城跡の場所を変えて顔を出すのをライトで照らす演出が、ミュージカル舞台『オペラ座の怪人』を彷彿とさせる。

e3:「聖なる島(リンディスファーン島)から流れ着いた石が墓標として積み上げられている」

英語のセリフでは、「ホリー・アイランド(Holy Island 意味:聖なる島)」と言っている。
これは、イギリス北東部、ノーサンバーランド州にある小島、リンディスファーン島Lindisfarneの別名。
小島といっても、潮が満ちると島となり、干潮になると土手道で本土とつながるタイダル・アイランド。
中世のケルト教会修道院の遺跡、渡り鳥たちの聖地として有名。

イギリスドラマの真髄、底力は、サスペンスドラマの前に、人間ドラマだということ。
被害者、加害者、捜査する者たち、そしてそれぞれに取り巻く人々。
すべての人々に”背負う”ものがある。
それを体現する俳優陣の層の厚さには、さすがにシェイクスピアを生んだ国であり。
5歳から「ドラマ」という演劇教育を授業を義務付けられている国でもある。

今作でも、地味ながら、その燻し銀の輝きは、シーズン1で、すでに風格さえ漂わせている。
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