みや

西遊記のみやのネタバレレビュー・内容・結末

西遊記(2006年製作のドラマ)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

【勇気とは人を想う強い心】

天竺を目指して旅をする孫悟空(香取慎吾)・沙悟浄(内村光良)・猪八戒(伊藤淳史)・三蔵法師(深津絵里)一行が、波乱万丈の道中で「仲間を信じる純粋な心」を手に入れていく一話完結の懲悪勧善の物語。

中国の古典小説『西遊記』を下敷きにはしているが、内容や登場人物の設定が大幅に脚色されている。

三蔵法師
「あなたはまるで石のように冷え切って勇気が欠けている」
孫悟空
「俺は強いぞ」
三蔵法師
「いいえ、違います。勇気とは強い力のことではありません。人を想う強い心のことです」
孫悟空
「強い心?」
三蔵法師
「人の幸せを共に喜び、人の不幸を共に悲しむ心のことです。孫悟空、私と一緒に天竺に行きませんか? 本当に強い心を見つける旅に」

こうして石の中で500年過ごした孫悟空を助けることから始まった旅だが、一行は行く先々で厚いもてなしを受けるも何度も騙され続ける。

時に巨悪な妖怪と対峙するも、仲間を信じ、人を思いやる温かくて広い心を持ち合わせているからこそ、毎度打ち克つ。

坂元裕二の描いた『西遊記』の特異な点として挙げられるのは、物語前半では「力(アクションシーン)」で成敗していたものが、後半には「言葉」によって正しい道に導くように描き方を変化させたことである。

困難な局面を乗り越える最大の武器は「人を信じる心」であるとの坂元裕二からのメッセージに思えてならない。

翠玲
「あの方たちがあなたの大切な人たちなのね。あなたは一人じゃないわ。なによりも素敵な家族がいるのよ」

第9話で翠玲(いしだあゆみ)が悟空に述べた言葉が印象的で、彼らは「ナマカ」(=劇中で悟空が度々使用する「仲間」の言い間違えのこと)であり、「家族」なのだ。

そう捉えると本作は坂元裕二の他の作品とは毛色の異なる物語ではあるが、後に描く疑似家族的なテーマにつながるものがあるだろう。

悟空が敵を成敗する際に発する決まり文句「たとえ神様仏様が許したって、この俺様が許さねぇ。さぁ、答えろ。天国へ行きてぇか、地獄へ行きてぇか」が清々しく、また彼らが成長していく姿に共感を覚える作りになっていた。
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