竜平

白夜行の竜平のレビュー・感想・評価

白夜行(2006年製作のドラマ)
4.1
幼少期に犯してしまう「ある犯罪」によって人生が大きく変わる男女、その壮絶な数年、残酷な運命の物語を描く。全11話。

東野圭吾の同名小説が原作、とまぁそっちは未読。で、ずっと前から薦められてたのとU-NEXTでの配信終了が間近にも迫ってたもんで急いで鑑賞。テレビで放送してた当時自分は中学生だったかな、じつに17年越しの鑑賞、ってゆー。

主演はまだ若さ溢れる山田孝之と綾瀬はるか。ドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』もこのコンビだったよねーなんて。てなわけで二人の熱演が光りまくる。性格としてはわりと対照的な主人公「亮司(りょうじ)」と「雪穂(ゆきほ)」。小学生時代に始まり、お互いの家庭事情とそこに子供にはわからないような良からぬ関係性というのがある中で、ひょんなことから心を通わせることになる二人。今作は子供のことを想えば想うほどに初っ端から結構エグい話だなと感じるはず。そこからのトラウマみたいなもの、避けられない現実に胸が締めつけられる。1話目なんかは約90分と映画並みのボリュームで、プロローグとしてがっつり描かれるここから引き込まれること請け合い。また2話目から始まっていく心理戦にも似た読み合いも見もので、介入してくる者、何かに勘付く者、そして嘘を覆い隠すためにまた新たな罪を重ねてしまう主人公たちと、そんな負の連鎖にも見入ってしまう。

今作の更なる見どころ(だと個人的には思ってる)が武田鉄矢、みんな大好きあの「金八先生」からは想像もできないような、関西弁でねちっこく攻めてくる執念の刑事を怪演。たぶん当時としても彼の新境地で、この得も言われぬ恐さは本当に素晴らしい。ニヤけてるのかそうでないのか一目では判断がつかない絶妙な表情よ。他にも渡部篤郎、麻生祐未、八千草薫、小出恵介や田中幸太郎、柏原崇や西田尚美などが脇を固める。様々な人物が関わったり巻き込まれたりしていく中で事情は入り組んで事件もややこしくなっていくけども、そもそも少年少女のシンプルな「恋心」が発端だったりして、今作はそんな純愛系のストーリーと犯罪絡みのサスペンスの掛かり方が絶妙なんだよなと。更に何年という長い年月の中で出てくる様々な疑心疑惑疑問、人としての弱さや歪んでいく自分自身への葛藤というのもどんどん色濃くなっていく、この人間ドラマも良き。主人公側が犯罪者、言ってしまえばフツーに「悪い人」に成り下がっていく様、善悪の区別、罪の正当化、罪悪感などいろいろごっちゃになって、後半へ進めば進むほど主人公側を応援できなくなっていくあたりもおもしろい。なんかでも、それをピュアに描いてるあたり今作は見やすいと言えるのかも。まぁこれ以上ドロドロと生々しく描いてたらテレビで放送できてなかったか、原作はもっとエグいのかなどうかな。とにかく、もがき苦しむ若者及び壮絶な過去やトラウマを持つ者の物語として、グッとくるものがある。

にしてもクズな大人たちが子供の将来を歪めていく様にはなんとも心が痛む。この大人たちの「責任」にまつわる人間ドラマなんかもじつは10、11話あたりで出てきたりするからこれも見どころ、お楽しみに。1話目の冒頭部分に繋がる終盤まで、非常に楽しく見れた。日本の連ドラもたまにはいいな、って思ったよん。おしまい。
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