Iri17

宇宙を駆けるよだかのIri17のレビュー・感想・評価

宇宙を駆けるよだか(2018年製作のドラマ)
4.8
これは面白い!もう日本のドラマで面白い作品なんて何年も観ていないのだが、なんとなくNetflixで観てみたら、これはすごかった。

学校一の美女と友達もいないブサイクな女の子の体が入れ替わってしまうという割とありがちな話でありながら、深層心理やいじめ問題を深く考察した哲学的で、社会的な素晴らしい作品。
普通の作品だと大体ブサイクな子は性格がいいのにブサイクだからいじめられていて、可愛い子は表ではいい子だけど裏ではクズみたいになりがちだが、この作品は逆、ブサイクは性格もブサイクであり、美人は性格も美人である。
しかし、ブサイクはブサイクであるが故の社会の目、壮絶な家庭環境から、自己防衛のために卑屈にならざるを得なかった。
一方、美人は優しくて金持ちの両親に恵まれ、美人だから周りからは慕われ、彼氏だってできる。そういう環境で育ってきたわけだから、人を憎むとか拒絶するとかいう感情は持たなかった。この対比がリアルというか、美人でクソもいるけど、性格もいい奴もいる、ブスで性格いい人もいれば、性格まで悪い奴もいて、これはそれぞれ理由がちゃんとあるし、それに真摯に向き合ってる。
だがこの2人、入れ替わっても人生は変わらない。美人になったって他人を信じなければ孤独だし、ブスだってそれを糧に明るく生きることもできる。
つまりこの作品は、人は外見ではなく中身が大事だが、外見に負い目を感じ、周りに蔑まれれば、中身も歪むので外見の人格への影響は否定できない。的なことを言いたいのだと思う。

ただ「大事なのは外見じゃないよ!中身だよ!」と美人女優に言われても、黙れテメーに何が分かると思わずにはいられないが、この作品はもう一歩踏み込んでいる。まさに美人が中身大事論を語っても響くわけがないということを踏まえているから最初から最後まで無駄なシーンなくずっと面白い。

よだかというのは夜鷹と書く鳥の一種で、夜に餌を求めて彷徨うことから売春婦という意味もある。
ただこの作品が意識したのは恐らく宮沢賢治の『よだかの星』だろう。
醜い鳥よだかは、周りの鳥からいじめられ、鷹からは「テメーその見た目で鷹名乗ってんじゃねーよ、殺すぞ」と殺害予告までされたために、人生とは何かを考え最終的に自殺して星になるという短い作品だ。
この作品で繰り返される身を投げて自殺するというのはまさに『よだかの星』と同じテーマであり、醜いというモチーフもあるので、これ原作者が『よだかの星』をモチーフに描いた作品なのだと思う。

この作品で一人二役で、二人一役を演じ切った清原果耶と富田望生のモンスター女優っぷりが半端ではなく、2人の演技対決だけでもかなりの見応えだ。
清原果耶ちゃんに関しては、数年前から「清原果耶ちゃん半端ないって!そんなんできひんやん普通⁉︎」状態だったのだが、いまいち周りが認知してくれないので、僕にしか見えてない天使かと思っていたけれども、山田孝之も大絶賛とのことですので、これから期待しでください。富田望生さんははじめましてですが、かなり素晴らしい演技だった。

本当に日本もこんなドラマ作れるんだなあ。というかドラマはテレビ局なんかに作らせないで、全部ネット配信にしてしまえばいいんだよ。
素晴らしかったです。

あと、あまがささんを逃すな、セキセイインコが急に自然界に放たれても生きていけぬわ
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