Shelby

不機嫌なジーンのShelbyのレビュー・感想・評価

不機嫌なジーン(2005年製作のドラマ)
5.0
当時、このドラマをリアルタイムで見ているとき、私は10歳前後だった。竹内結子の美しさと内野聖陽の男の色気に目が釘ずけで目の前で繰り広げられる大人の恋愛模様を固唾を呑んで見守っていた。今回たまたまCSで再放送があるとのことで、タイミングが合ったら見ようと思っていた。

あまりドラマなど好きになれなかったのに、なぜ当時このドラマが好きで見ていたんだろう、と。
今回見返してみて分かった。ああ、確実にこういったメディアの影響で今の自分が象られたのだ。そう思えるほど、時代を先取ったドラマとして現代のドラマとしても充分通用する内容だった。

サザエさんばりのレトロなファッションで毎回、回ごとに出てきた動物たちをおさらいする終わり方やエンドクレジットには密かにその回の特徴を記した名前を記載されていたりと遊び心に富んだ演出が多く、今見ても全く飽きることがないドラマだった。

主演の竹内結子や内野聖陽をはじめ、神宮寺先生の天才数学者キャラ演じる小林聡美や有明海の干ばつで全てを失った勝田演じるオダギリジョーなど脇を固める俳優陣も非常に演技力が高い。

仁子と南原の2人の掛け合いは微笑ましいほどに愛おしく感じる。

「相変わらず不機嫌な顔だな」
「うるさい。誰のせいですか」

ツンケンしながらでしか、お互いコミュニケーションが計れない不器用な大人2人が、徐々に心を通わせていく様は今見てもムズキュンなのである。

最後には南原教授のオーストラリア行きについていくことなく、自分のキャリアを優先させた仁子。お互い好き同士なのに、別れる選択をする。数年後、タクシーから不意に流れたのは、あの2人で暮らしたロンドンでよく聞いていた「lovers concerto」
不意なタイミングで彼を思い出し、苦悶の表情を浮かべる仁子。こうやって2人の記憶はゆっくりと、過去のものになっていく。

数年後、偶然街中で再開する2人。
南原の隣には別の女性。それでも2人は
久びさの再会を心から嬉しそうに喜び合う。
そして別れるのだ、別々の道へと。

数あるドラマの中でも、忘れられなかった理由は仁子の弱々しさの中に垣間見える芯の強さに心惹かれたからだった。

ごめんなさい、とすぐに口にするほど気にしいで周囲の空気を読もうと必死なのにその周囲の枠を息苦しいとすら感じて必死に藻掻く不器用で可愛らしく、美しい女性。

作中のジーンの年齢をとうに超えた今ですらも、彼女のようになりたいと思うし、逆に何よりも彼女のように自分らしさを見失いたくない。

今年は色々な決断をしなくてはならない時期ということもあり、余計に背中を押された。

この時期に、見返したことに意味があったと強く感じる。竹内結子さんが亡くなられたことは報道当時本当にショックだった。こんな素敵な作品を演じてくれて、本当にありがとうという感謝の気持ちでいっぱいです。

いつまでも忘れません。
Shelby

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