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刑事ヴァランダー シーズン2のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

3.7
"大丈夫かヴ、ヴァランダー…"
と相変わらず内心では(サスペンスを観る際らしくない)或る意味別な気持ちで心配しながら?観るシーズン2であったが。

第一話は脚本が甘過ぎ。2.3.話は練られている。が、お決まりのメンバーを登場させなきゃならないドラマ展開はやはり安っぽく要らない部分。
いずれにせよ "な、なんで其処で一人で行っちまうの⁉︎"&"け,刑事のくせに、いちいち其処まで落ち込まないでよ〜⁉︎"の応酬なのだが、が何故だか観てしまう。
景色や建物や美術の美しさか?
北欧美人のさりげない妖しさか?
黄門様の印籠ならぬ、お決まりの展開に結局は安心して観ているのかワタシ?
自問しても、その答えはワカラナイ。

主人公はグジュグジュ悩みながら、八つ当たりもするし直ぐ涙ぐんじゃう中年。
人恋しいくせに、直ぐ独りになりたがるし…彼は情けなくて、みっともない。
でも真っ直ぐで、一所懸命に生きている。

全編、大きな風景の中で、風や雨や雲が、緑や川や、自然の風景が無声場面で挟まれる。
まるで人の営みや行いを黙って視ている様な気がしてくる。

主人公に於る誰もに起こり得る悲劇や、彼の愚直で優しい人格。時に厳しく時に安らぎを齎す自然の現象。
約1.5時間の中でそれらを編集で散りばめてこそ、物語の空気やつまりは通奏テーマはさりげなく統一されていたと感じた。日本の多くのドラマ(いつしか全く観なくなってしまったが)とはまるで違う質感。



忘れてはならないのが何回も写されていた主人公の老いた父の描いてきた絵画だろう。
"何百枚もずっと同じ様な絵を描いていた"と、父亡き後に主人公は呟く。
その絵には"屹立しようにも、かくも弱き存在"のニンゲンの心みたいなものが見た目は風景画として描かれていた様に思う。

向こうには浜辺=我々が来た海が在り、手前にダケカンバ類らしき樹木が点在乱立し、その林の地上の片隅には雷鳥がポツンと描かれていた。
雷鳥は標高高き山岳地帯に生息する鳥ではないのか?はたして此の国では、平野や海近くでも見かけるのか…ワタシは知らない。知らないし調べてはいない。
唯、海には帰れない鳥がここまで降りて来ても尚、薄暗い樹林の中に佇んでいたのは確かだ。
其処はある意味で海からの防風林的な位置にもあり、視ている我々側も決して明るく描かれてはいない印象。
だが、その絵のこちら側の果ての果ては山岳である筈で。
つまり描かれた景色と我々の間、そしてその先との間にはどんな景色が在るのか…何をワタシ達は(心の中で)視るのか…

父の描く絵を決して好きとは思わなかった。思わなかったが印象に残り、考えさせられた。だから収穫だったと思う訳だ。


ヴァランダーを暗いと嫌う人も居れば、"信じられる"みたいな感想を持つ人も居るだろう。
しかし、本作にドラマ的な安直さが随所にみられても、驚かそうとばかり派手さで売る作品よりワタシはよほど集中出来た。
シーズン1.と2.の幾つかの脚本の骨組みは、何処かで必ず盗まれるだろうと思った。
その際には本作の湿感=情緒みたいなものは、きっと無くなってしまうのだろうな…と不図思ったりした。
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