ダイナ

HANNIBAL/ハンニバルのダイナのレビュー・感想・評価

HANNIBAL/ハンニバル(2013年製作のドラマ)
4.6
時代設定を放送当時(2013)に置き換え、原作・映画の内容を多々変更したハンニバル・レクターの物語。これは滅茶苦茶面白い!!!!!!!!!!!

本作の主人公はウィル・グレアムというプロファイラー。何を隠そう映画「レッドドラゴン」の主人公。本作は「レッドドラゴン」の時期の出来事を脚色し再構成した一作で、この時点では拘束すらされていない社会的地位の高い精神科医ハンニバル・レクターが不可思議な縁で繋がったウィルと猟奇事件の解明に取り組むというサイコミステリー。魅力な部分に役者・グルメ・残酷描写・ストーリーが挙げられます。

【役者】
レクターのイメージといったらホプキンスが最強ではありますが、個人的には同格までいったんじゃないかと。「ハンニバル・レクターの壮年期これ!」と太鼓判を押したくなる佇まいのマッツ・ミケルセンがとても素晴らしい!暗躍して実行する犯罪と料理の手際の良さ、品性のある喋りに全てを見透かすかのようなオーラ、もう完璧!またマッツばかり有名な本作ですがウィル役のヒュー・ダンシーの暗闇一直線な演技もとてもすばらしいです。映画のノートンの明るさみたいなものは全くないです(これはウィルが悪いんでなく環境が悪いという後述のストーリーで触れます)。いぶし銀で理知的かつ人間味の脆さみたいなものを垣間見せる刑事ジャック役のローレンス・フィッシュバーンも良い!

【グルメ】
ことあるごとに映される調理描写や食事のシーン。ドラマは全体的に暗く、料理も一般的にテレビや雑誌で見るような明るさで映されている訳でもないのに美味そうだし、肉を知っている視聴者としてもちょっと食欲を刺激されるような料理のビジュアル!盛り付けの重要性というものをこの作品で学ぶとは。本作を見ていると殺人現場工作と料理の共通項みたいなものが見えてきますね…。

【残酷描写】
「羊たち〜」のバファロービルクラスの猟奇犯がゴロゴロと出てきて、なんなら1話で消化される贅沢さはハイカロリーがすぎる!特に目を惹くのは「芸術的な見立て」。剥がされた背中の皮を吊るされて天使のような死体や、弦を喉から突き破って楽器のように見立てられた死体などなど、凶器で刺された殺人現場!のようなごくごく一般的なミステリー的現場は全く無く、どれも目を背けたい凄惨さ。だけどもどこか美しく、「なんでそんなことを?」という解明への求心力が強く提示され惹きつけられます。これを見て淡々と観察してる捜査官達の猛者感よ。ヤバい奴多すぎるよーこの土地。

【ストーリー】
ウィル・グレアムは共感能力というものがとても鋭く、事件現場を見ることで犯行や再現することができる(これが映画以上にチート級)んですが、犯人に共感しすぎるあまりその邪悪さに自身が侵食されていく危険性も背負っているわけです。作中ではフォリアドゥと呼ばれ、「猟奇犯の犯行を脳内で再現する度にウィル自身も猟奇的思考に侵されていく」という諸刃の剣を携えるウィル・グレアムに目をつけたハンニバルさん。表向きにはたくさんの人をセラピーで癒しながら、裏でド犯罪犯しながら暗躍するレクター博士が興味を持ってしまったわけで、ウィルを支えながらウィルを精神的に追い詰めていくやり口がもう酷い!最高!「は!?」となる終盤の展開、クライマックスの構図は知っている人が見たらより混乱する最高のクリフハンガー。

本作鑑賞にあたり映画は観ていなくても大丈夫ですが、「羊たちの沈黙」「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」を抑えてくと「これってあれじゃないですかー!」とニヤニヤできるので映画オススメです。もちろんライジングの内容もあるのでライジング好きな人は期待していいですよ。
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