Fitzcarraldo

ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン 1のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

5.0
間違いなくNETFLIXの黎明期を下支えし、現在の地位を築くに至ったモンスターコンテンツシリーズの第一弾!

テレビドラマの監督にデビッド・フィンチャーが初挑戦というのも掴みとしては十分に効果を発揮したか…

オバマ元大統領も本シリーズが大好物らしいのだが、一体モノホンの大統領だった人物が誰目線で物語に注視しているのか…目的の為には手段を選ばないやりたい放題の無法者であるフランシスに、まさか自分を重ねて喜んではあるまいな⁉

モノホンの大統領が毎話楽しみにしていたということは、少なからずリアリティは担保されていたという表れであろう。リアリティのないデタラメばかりのドラマであれば、見るに堪えないはずである。

原作は、英国サッチャー首相政権時に首席補佐官を務めたマイケル・ドブズが書いた小説『ハウス・オブ・カード』と、1990年から1995年にBBCが製作したテレビドラマ『野望の階段(I~III)』を基に、映画『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』の脚本家ボー・ウィリモンがアメリカを舞台に置き換えて企画し、自身はショーランナーとして現場を仕切った。

とにかく野望の男フランシスを演じたケビン・スペイシーのクソ野郎度が振り切っていて最高!
見ている視聴者だけに本音を語りかける反則行為もまた物語とキャラに巧く融合して非常に心地が良い。

物語の登場人物と、見ているお客さんとの壁をあえて飛び越えることによって、余計な説明(内面の心情を画として見えるカタチで描写しなくてはいけない)を省けるので、それが強力なテンポアップとなって物語の推進力を押し上げることに成功している。


採録

第一話

ケビンスペイシー
(フランシス・アンダーウッド)
「権力は不動産と似てる。いつなんどきでも重要となるのは場所だ。中心に近くなるほど存在価値が高くなる」



第二話
フランシス
「なんたる才能の浪費…彼は、この街の大勢と同様に権力より富を選んだ。富など、10年で崩れるフロリダの豪邸のようなもの。権力は、数世紀先まで残る堅牢な石造建築だ。違いを知らぬとは愚かしい」



フランシスの部下 スタンパー
「君の人生にもはや秘密は存在しない」と下院議員ピーター・ルッソを脅す。



ルッソが訪ねた汚い男
「今の政治は安っぽい人形劇だ。ぶっ壊さなくては…」

ルッソ
「激しいね」


「真の愛国者さ…」

ルッソ
「公務は悪だと?」


「政府を誰が操っているか知らんのか?IMFに世界銀行、三極委員会、政府の金は奴らの暗殺部隊へ。FEMA、アルコール、タバコ、火器取締局、NATO、国境警備隊、カトリーナの悲劇は政府の怠慢が招いた。アムネスティも自由人権協会も…人々を見殺しにした」



第四話

ケイトマーラー演じるゾーイとヘラルド編集長

カント=クソ女?
米国ではかなりの差別用語?ピーが入るほどの言葉だと町山さんが言ってたような…

編集長ハンマーシュミット
「カント!ユーアーカント!」

ゾーイ、携帯を操作し始める。

ハンマー
「何してる?おい、やめるんだ!」

ゾーイ
「中身も分からないのに?」

ハンマー
「出て行けゾーイ」

ゾーイ
「待ってもうすぐ済むから」

ハンマー
「出て行け!お前はクビだ!」

ゾーイ
「そう言って気が済むなら」

ハンマー
「(部屋の扉を開け放ち)ゲットアウト!」

ゾーイ
「これアップしましょうか?アップしよう。(アップロードの音)罵倒したきゃすればいい。でも覚えておいて。今の時代、ひとりに向けて言ったことは1000人に言うのと同じだから」



第五話

Vネックに谷間を安い手と言って馬鹿にしてたフランクが、遂にゾーイのその安い手に乗り、一夜を共に。その一夜明けてのオープニング。
Twitterかなんかを見てるゾーイのスマホを水の入ったコップの中へ沈めるフランク。痕跡を残すな…プリペイドの携帯を用意する。すげーことするな。セックスしといて、この対応!まぁゾーイもフランクなしではネタが取れないからウィンウィンなんだろうけど。
やり方が一般的範疇を超えてしまっているから、面白い。政治のためにそこまでやるのかと。フランクも国務長官の座を狙ってるから、そのためなら何でもする。権力はPOWER…ほんとよく訳したよ。


ピータールッソが反抗しにフランクの家の前で待ち伏せる。家の中に入れるフランク夫妻。
造船所が閉鎖されて泣いてベソをかく。あんたのせい…造船所の友達も悲惨だし、オレも悲惨だと…

フランクは黙って聞き
「気が済んだか?立て!いいから立て!ついて来い!」

バスルームに連れて来て、湯船につかれと指示。

フランク
「今週、党の全国委員会があった。知事選の件だ…候補者として君の名前が挙がったぞ。アスピリンだ。飲め。その場にいる全員が候補から外すと言ったが、私だけは反対した"ピータールッソには素質がある。若くて優秀で将来も有望だ"と…私が外すなと周りを説得して、君を候補に残した。だが、君は、深夜にウチを訪ねてきた、酔っ払い、ベソをかいて、責任を転嫁しようとした。自分の行動が招いた結果を正面から受け止めようともせず…委員会の言う通り、君は役立たずなのか?君の可能性を信じてるのは私だけだが、信じたのがバカだったか…湯の温度で毛細血管が開き、アスピリンで血液がサラサラになる。どうする?ピーター。(剃刀を側に置くフランク)自殺すると決めたら1つ気をつけろ。血管に沿って縦に切れ。横に切るのは初歩的なミスだ」

人心掌握術にホントに長けているフランク。弱った相手の言うことを最後まで聞いてからの、全員お前を候補から外す、要は無能扱いしたのに、そこでオレだけが、フランクだけが、見込みがあると発言して候補に残したと…俺だけがお前の能力を信じてると…そんなお前を信じたオレがバカなのか?ここまで言われたら、やる気になるでしょ!誰だって!そりゃ落ち込んでる時に掛けられる言葉としたらこれ以上の言葉はない気がする。大丈夫だよとか頑張ろうとかいう口先だけじゃなくてね。そんでこのフランクにはパワーがあるからまた…ついていくと旨味がね、あるからね。こうして政権や権力に逆らえなくなる仕組みが出来上がっていくのか…だって食物連鎖のトップの方から言われたらね、断れないよな…見返りもあるわけだし。こうして汚職や裏金、権力あるポストへと悪の連鎖は始まり、それが断ち切られることは一生ない!

その点、差別用語満載だったハンター編集長は偉い。オーナーからの提示を素直に自分から受けて退職願いにすんなり判を押すあたり、昔気質の頑固さが残っている。そっちを取るならじゃーやらねーよってね。

しかしウエストワールドシーズン3の時も感じたが、富裕層の女性役の格好がめちゃくちゃカッコイイ!本作ではフランクの嫁、ロビンライトがズーッとカッコイイ!毎日毎日ランニングで鍛えてるし、服装がピシッとして格好いい。まさに大人のスタイリッシュさのお手本。これ金のない庶民には出来ない服装なのかしら?シマムラやユニクロで真似しても同じようにはならないかしら⁉…



第六話

クラブのような飲み屋
スラングラインの若き創業者の女性とゾーイがカウンターで飲んでいる。

カーリー(スラングライン創業者)
「起業した理由は大まかに2つよ。人に使われるのが嫌だったのと、上司よりも優秀だって自負があったから。人を抑えつけて締め出すような組織には見切りをつけた」

ゾーイ
「いきなり辞めたの?」

カーリー
「いや、あなたとは違うわ。ガムシャラに働いてスラングラインを始める資金を貯めた」




自分の警備担当がレンガを投げ入れた犯人の最中に向けて発砲してクビになりそうになるのを警部に口添えして助けてやる。
フランク
「たかが電話一本でミーチャムの生き甲斐が取り戻せる。実に、安い投資じゃないか…」



第七話

断酒会にて
ダグ
「私はダグ。依存症だ…私の仕事の一つは票を数えること。賛成、反対、中立、棄権…その道のプロだ。でも他にも数えてるものが…99年4月4日からの日数だ。今朝で5185日になる。数が増えるほど恐怖が募る。1杯でゼロに逆戻りだからだ。恐怖心は一般に弱さと見なされる。私も仕事で人の恐怖に付け入る。ほめられた話じゃないが我々の治療と同様哀れみは無用だ。失敗はありえない。私は自分自身にも哀れみはかけない。自らの恐怖を利用し己を鍛える。別人にはなれなくても"ゼロ"は退けられる。ゼロは許されない」

回を重ねる毎にロビンライト演じるクレア夫人の美しさが際立つ。
公の場に夫と出席する時の衣装から放つ品の良さが群を抜いてる。佇まいから醸し出すファーストレディ感というか、ホンモノ感が抜群だね。借りてきてた猫のような、衣装を着せられるだけの女優とは1枚も2枚もウワテ。
ホント美しいなぁ。
品行方正と掛け離れてる自分としては、やはり上品な女性は憧れてしまう。



第9話

遂に遂にロビンライトが旦那であるフランクに造反する。自分の事ばかり押し付けてきて、ロビンライトの言うことを一切聞かないフランク。

ロビンライトの会社でお互い激しく口論がヒートアップ!ここはロビンライトも真っ向勝負で一切引かない!カッコイイ!

ケビンスペイシー
「CWI(クリーンウォーター)の活動は確かに重要だ。だが我々が目指すものとは比較にならない!!私の本音だ」いったい何を目指してるのか…この辺をハッキリ言わずにしとくのが、また後をひいてクセになる。

ロビンライト
「私も他の皆と同じあなたの道具ね。裏切られたのは私よ…」

ケビンスペイシー
「(たっぷりと間を取って…相手の顔をよく観察して)更年期の症状か?」
ここの間が最高だ!!!!!
なんてセンス!!!いい間を取るわ!そしてその声音もベスト!張り過ぎず抑えすぎず。相手の心の臓をグサリと一撃で突き刺す感じ!!超わらった!!ここで更年期だすかねぇ!しかも天下のコンサバ女王のロビンライト様に向かって!!いやー最高です。

ロビンライト
「(まさか⁈いまなんてった?そんかこと言う?的なグッドな表情で返すロビンライトも流石です!なんとか絞り出すように)出てって………早く!」

いやー名場面!



第11話

クレアとアダム
クレアがフランシスとケンカをして家を飛び出し、とまり木であるカメラマンのアダムのもとへ。
しかし…ご飯の時にパソコンの画面を食い入るように見るクレア。画面にはピーター・ルッソはどこに?とある。


アダム
「今朝ニュースで…」

クレア
「フランシスが出馬させた」

アダム
「友人かい?」

クレア
「親しくはなかった」

アダム、パスタらしきものを食べている。
クレアは画面から目を離さない。

アダム
「電話するなら外す」

クレア
「いいの、ありがとう………」

アダム…堪らずに席を立つ。

クレア
「どこへ?」

アダム
「ラボだ。仕事が遅れてる」

クレア
「アダム!」

アダム
「帰れよ!こんなの続くはずないだろ!僕らはどうせ48時間が限度の仲だ!」

クレア
「まだあなたに愛情が…」

アダム
「どんな愛情だ?…僕を休憩所か避難所だと思ってるんだろ…彼だけじゃ物足りず…」

クレア
「やめて!あの人は私の夫よ!共に多くを乗り越えてきた。あなたの自由さには憧れるけど、世界が違う」

アダム
「君のそういうところがもどかしい!君は不自由になる道を自ら選んだんだ!」

クレア
「長く愛せる男を選んだの!………………ごめんなさい、私…」

アダム
「本音が聞けた」

クレア
「"この瞬間"だけには生きられない。フランシスとは歴史があるし未来もある。瞬間より大きなものよ…」

アダム
「なら殺すべきだ…僕への愛情とやらを…できないなら…僕が葬る」

立ち去るアダム…

このアダムったら…なんか物凄く馴染み深いんだけど…。



第12話

大統領が副大統領に指名したいというレイモンド・タスクという男の説得に赴くフランシス。

森の中で話す。

フランシス
「フルトン原発を拝見しても?」

レイモンド
「君が見たいならな。ここのほうが楽しいと思うが」

フランシス
「原発は初めてです」

レイモンド
「つまらんぞ。鋼鉄とコンクリート、水蒸気だけ…」

フランシス
「大統領は原発推進派ではない。それで政権入りを躊躇されているのでは?」

レイモンド
「彼は抜け目ない男だ。日本の事故後、原発は売れない。だが原発は現在、地球をダメにしない唯一の手段だ。原発を否定するのは感情論にすぎん」

フランシス
「感情では判断なさらない?」

レイモンド
「感情に基づく判断など判断とは呼べない。"本能"だ。それはそれで価値がある。理性と非理性は互いを補完する。どちらか一方では弱い」

フランシス
「副大統領の件は、どちらでお考えに?」

いやいやいや地球をダメにする一番の手段が核燃料でしょ?核のゴミの放射能が影響なくなるレベルまでになるのが10万年といわれているんですよ!どうすんの?原発を稼働し続けるほど、行き場のない棄てる場所のない核のゴミが増え続ける。『トイレなきマンション』とまで揶揄されている原発を稼働させるな!

なぜ安全な処理方法を確立もせずに、世界中に原発が作られたのか?

そして、ここ日本で…あれだけの事故を起こしておきながら…原発は既に再稼働している。

核を落とされ敗戦…そして二度と戦争を起こさぬように憲法9条ができたのではなかったのか…それなら福島の原発事故を踏まえ、脱原発を世界に先んじて掲げる必要があっただろう。

自分のこと、自分の利権のことしか考えないクソ共のせいで…あー腹立つわ!

ちょっと違う話になるので、これはまた追々…
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