ゼロ

ブレイキング・バッド ファイナル・シーズンのゼロのレビュー・感想・評価

5.0
この男、伝説となる。

最終話を観て、大きな喪失と大きな喜びがありました。大きな喪失は、どんどんと面白くなっていくウォルターの物語を観ることができない喪失。大きな喜びは、ウォルターが「悪に染まること」を自覚させ、本人の成し遂げたいことを成し遂げ、納得のいくエンディングまで導いたことにあります。

本シーズンは、ハンクに「ハイゼンベルク」の正体がバレて、ウォルターが追い詰められます。ハンクも、ウォルターを追い詰める時は、確実な証拠がある時のみで、疑いがある時で報告しても、共犯者として見られてしまうという認識がありました。

相棒のジェーシは、ウォルターを信じようとしていましたが、ある子どもの死のキッカケがウォルターによる毒殺だと分かると、信頼はなくなり、殺しの対象となりました。彼は、ウォルターやガスやマイクなどの悪役とは違い、サイコパスになれず、中途半端な人間でいました。

ウォルターは、「家族のために麻薬製造をしている」と口にしていましたが、自分を守るために家族の人間を殺してしまいます。予想外の人物が死んだことにより、家族の人間に俺を信じろと口にしても誰も信じてくれません。彼は、お金も手に入れることができず、家族も手にすることができなくなりました。

「ニューハンプシャー」「フェリーナ」では、ウォルターの一人孤独な生活を描きます。ここで隠居して物語を閉じていくのではなく、彼は野望のために行動をします。

ウォルター・ホワイトの成長物語として観れば、「家族のため」と嘘を口にしていた最初に比べ、最後には「自分のためだ」と真実を口にするようになりました。数々の困難や課題を経て、1つ成長します。その成長が、社会的に認められるものではないというのが、悪の物語の主人公の悲しいところです。

最後までウォルターの勇士を見届けることができ、納得のいく終わり方をしてくれた本ドラマは、大変面白いものでした。ありがとうございました。
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