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ブラック・ミラー シーズン4の傘籤のレビュー・感想・評価

ブラック・ミラー シーズン4(2017年製作のドラマ)
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全体を通してハイクオリティな話が多く、観ていて飽きない。とても充実感があるシーズンでした。これまでに比べてジャンルが豊富になっており、スぺオペ、ディストピア、恋愛、ポストアポカリプス、医療と手を変え品を変えて楽しませてくれます。これこれ、こういうのでいいんだよ。オチに関しても前シーズンまでは胸くそや鬱っぽいのが多かったですが色々増えています。1時間以上ある話も結構あるのにダレずに観れちゃうのすごいなあ。
では以下で1話ごとの感想を。

1話 宇宙船カリスタ―号
スター・トレックそっくりの宇宙活劇SFが始まったかと思ったら、そいつは冴えない中年男がやっていたゲームの出来事でした、というお話。なんちゅう悲しい話や……と思いきや、この話にはもうひとひねり用意されており、プレイヤーで天才プログラマーでもある主人公は、現実世界にいる人のDNA情報を解析してゲーム内のキャラクターとしてコピーする改造を行い、リアルでの鬱憤をバーチャルで晴らしていたのでした。んでゲームナ内のキャラはなんとか脱出しようとするのだが……という展開。ゲーム内キャラを好き放題に扱うこと、クローン技術の是非、いろいろ感じることはあるけれど、こんな露悪的にフィクションを扱うことないぢゃん……とは思ってしまう。主人公がやっていたことは気持ち悪いし、嫌悪感があるけれど、すげえ悲しいし、救いがあってほしかった。あのラストはあんまりだ。

2話 アークエンジェル
娘の安全を考えて彼女の頭の中に監視チップを埋め込んだ母親。おかげで娘の視界や居場所はすべて把握できるように。やがて娘は成長し、いったんは脳内の監視を外すのだが、その後再び母親の干渉が始まり……という内容。すげえグロテスク。視覚的な意味ではなく倫理的な意味で。親の過干渉が生む悲劇です。視聴者としては母親のおぞましいばかりの愛情に嫌悪感を催すことになるのだけど、すべては娘を大事に思うところから始まっていて、それが終始悲しい。最後に娘は自身の記憶をさかのぼり、母親はデバイスによって娘を求めようとする。結局のところ母親は、デバイスを通してしてしか娘を見ていなかったのだろう。不愉快版『あなたの人生の物語』みたいな印象の話です。うげえ。

3話 クロコダイル
これも記憶に関する話。というか出てくるテクノロジーは2話のものと大差ないので、その変奏といった感じの短編でした。
若い頃に犯した過ちが記憶を発掘させるデバイスによって捜索され、徐々に追い詰められていくというサスペンスっぽいSF。なんだけど、途中で再生することになる記憶の中のビデオ映像がニコニコ動画のMAD映像みたいなバカっぽい感じになってて笑っちゃいました。あのバカっぽさとかやり過ぎ感はギャグでしょ。あと締めるタイミングもすごい。

4話 HANG THE DJ
くそー、『ブラック・ミラー』はたまにこういうの挟んでくるんだよなあ。こんなどストレートにロマンチックなことやられちゃそりゃ感動しちゃうって。
マッチングアプリの進化版、具体的には男女の仲を繋ぐだけでなく、食事で何を頼むか、ホテルにどのタイミングで行くか、セックスの同意、さらには別れるときまですべてお膳立てしてくれるというハイテクなアプリを使った男女の物語。ハピネス。愛。ラストの見つめ合うまなざし。もはや言葉は要らない。

5話 メタルヘッド
ポストアポカリプスっぽい世界観で、何かを盗み出そうと倉庫に忍び込んだ強盗団が四つ足歩行のロボット兵器「メタルヘッド」にボコボコにされ、ひたすら追い回されるというお話。マッドマックスみのあるカーチェイスから、森の中でのサバイバルなど、アクション要素盛り盛りで絵的に楽しく、あえてモノクロ映像にしているあたり通好みな作品です。たった一人に対してこんな高性能のロボットを使い続けるってリソース管理どうなってんねんと思いますし、お話自体は単純な追いかけっこなのですが、前シリーズまでで感じていた「ジャンルとしてのバラエティ不足」を解消するような作品でニッコリしちゃいます。ゴーゴー、レッツサバイバル!

6話 ブラック・ミュージアム
『ブラック・ミラー』シリーズを1話でコンパクトにまとめたようなショートショート集。「犯罪博物館」という特異な場所でSF版シェヘラザード(話してるのはおっさんだけど)をやる話。自分も語り聞かせてもらってる気分になりながら観ました。聞いてる黒人の女の子もようこんな長話にちゃんと付き合うもんだ……と思っていたら、それもちゃんと伏線でした。やるう。
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