てつこてつ

そして誰もいなくなったのてつこてつのレビュー・感想・評価

そして誰もいなくなった(2015年製作のドラマ)
3.5
原作は小学生の時に読み、驚くべき展開と真犯人、トリックに衝撃を受けた、アガサ・クリスティの中でも特に印象に残る物の一つ。

先日、1945年製作のルネ・クレール監督の映画版を鑑賞し、原作とはエンディングが異なるものの、見事な映像化に感心したので、こちらの比較的新しい三話物のドラマ版も鑑賞。

やはり、イギリス人の豪華俳優陣が共演しているだけあって、見応えあり。やはり、クリスティ作品はイギリスアクセントの英語がやっぱりしっくりくる。

三話の終盤までは、ルネ・クレールの映画版のような展開になるかと見せておきながら、そこから急展開して、結末は原作通りという流れ。

映画版と比較して、登場人物たちがそれぞれ抱える“罪”を振り返るシーンが入ることで、一人一人のキャラ描写が丁寧。その点、映画版はそこの部分をはしょっているので、「今回殺されたのはどういう人物だっけ?」となる部分も多々あった。

特に、メイン扱いとなる一人のキャラクターの過去の振り返りシーンは、なかなか凝っていて素晴らしい描かれ方。

コンプライアンスが重視される今の時代において、映画や日本語翻訳の原作版にあった“10人のインディアン”のマザー・グースの童謡が、“10人の兵隊さん”に置き換えられてるのは致し方ないが、作品で登場するその像が、ちょっと芸術的過ぎて、映画版のオープニングから堂々と登場するケバケバしく存在感がタップリある彫刻像のほうが、ゴシック調の不気味な雰囲気があって個人的には好み。

また、肝心の童謡が映画版では一人のキャラクターによりピアノに乗せて歌われ、一人づつ童謡のスタイルで殺される見立て殺人としての見どころを事前に提供してくれたのに対し、本作では詩として描かれ、殺人後に詩の内容が明かされるのは、ややつまらない。

十分に面白いこのドラマ版ではあったが、原作と大きく異なる終わり方をしながらもモノクロならではの映像美と畳みかけるようなストーリー展開が見事だった映画版のほうが自分は好き。
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