YasujiOshiba

エクスパンス −巨獣めざめる− シーズン6のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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アマプラ。このシリーズは面白い。2015年から始まったシリーズ、ついにシーズン6に突入。現在5話までみたけど悪くない。でもほとんど忘れてきたので、少しおさらいしておくことにする。

そもそも宇宙を舞台にしたハードボイルド探偵物語って感じで始まったものが、高度な知性を持つ異星人に由来する物質プロトモレキュールの存在が明らかになるや、この物質の可能性をめぐって、地球と火星と小惑星帯のOPA(外惑星同盟)の三つ巴の争奪戦となり、気が付くと未知の物質は宇宙空間に巨大なリングを形成する。じつはこれ、千を越える天体系へのポータルとなって、新たな宇宙開発への道をひらくものだった。これがシーズン3までの概要。

シーズン4からは、リングがつなぐ外宇宙へのゴールドラッシュにより、地球人(アーサー)、火星人(マーシャン)そして外惑星のベルターたちが三つ巴になって利権を求めることになる。そのとき、外宇宙にある惑星イーロスでは、プロトモレキュールの構造物の活動が問題となり、ロシナンテ号のホールディンが、ベルターの探偵ミラーの亡霊(というかプロトモレキュールに取り込まれた意識体)が、その破壊的な活動を阻止することになる。

シーズン5では、ベルターのなかで頭角を表したマルコが、プロト分子を保有し、小惑星帯の独立とリングと外の宇宙の支配を宣言して、フリー・ネイビーを立ち上げると、地球に大規模なテロ攻撃をしかける。実は火星では軍事的な規律が緩み、フリー・ネイビーに兵器を売っていたのだ。このたりは旧ソ連の崩壊と武器の流出を思わせるだけではない。流出武器を使ったテロの頻発から9・11への流れを連想させる。
そんな流れに父と母と息子の関係がからんでくる。ベルターからの熱狂的な支持を受けたフリー・ネイビーのリーダーマルコだが、その息子フィリップは、じつはロシナンテ号の乗組員でホールディンの恋人となったナオミとの間に産まれた子供なのだ。母は息子を取り戻しにマルコのところにゆくと、フィリップに母親の存在を知らしめるのだが、さすがに取り戻すことはできず、命懸けで逃げ出すことになる。

こうしてシリーズ6では、マルコというテロリストのリーダを父にもった息子フィリップの苦悩がポイントになる。なにしろ彼にはナオミの血がながれているのだ。戦いの勝利だけではなく、戦いのなかで愛する人を失う苦悩を知ること。そんな成長物語が予感されれる展開。

さらには、リング外の惑星ラコニアの植民村での不思議な生物との出会いが意味深。それは犬のような不思議な生物なのだが、こわれたものは機械でも生物でもなんでも元通りに修復してしまう。そして、そんな生物と知り合った少女の弟が事故で死んでしまうと、その遺骸を少女はこの生物のところに連れてゆくことになる。まさに「ペットセメタリー」、続きが気になるところ。

マルコのフリー・ネイビーはさらなる圧倒的なテロリズムを計画していたのだが、これをロシナンテ号が見破り、ことなきをえる。しかし、火星から購入していたレールガンにより、地球と火星の連合軍はその兵力をけずられることになる。

そこで連合軍を指導するアヴァサラーラは、ベルターだがマルコと対立するドラマーと会談し、協力関係をとりつける。フリーネイビーを支持するベルターの一枚岩に楔を打ち込んだかたちだ。

しかしながら、こうした人間の争いごとの背後で、あのプロトモレキュールによって生まれたリングに、ある秘密があることが明らかになる。人間がリングを使い続けると、航行する船を消滅させてしまうホールが宇宙のあちこちに開くことがわかってきたのだ。

そのあたりまでが第5話。さあて、これからどうなるのか。楽しみなってきた。

追記:
テレビシリーズはほぼ原作どおり。原作の「エクスパンス」シリーズは、全部で九作ある。タイトルは次のとおり:
1)Leviathan Wakes 2011
2)Caliban's War 2012
3)Abaddon's Gate 2013
4)Cibola Burn 2014
5)Nemesis Games 2015
6)Babylon's Ashes 2016
7)Persepolis Rising 2017
8)Tiamat's Wrath 2019
9)Leviathan Falls 2021

こうやってみると、このシリーズは「リバイアサンが目覚め」るところから始まり、「リバイアサンが倒れる」までを描くわけだ。リバイアサンを知る鍵がプロトモレキュールというわけなのだろう。

テレビシリーズのほうは現在シリーズ6が進行中。それぞれのシリーズは、上記の1〜6までのタイトルと一致しているから、ふつうに考えれば、あと3シリーズやってもらえれば完結する。

もうこうなったらぜひやってもらいたいよね。

追記:
6話をみた。シーズン6は6話で完結なんだね。そんな予感もしてた。最終話のタイトル「バビロンの灰」が、原作の各シリーズのタイトル(6巻はまさに「バビロンの灰」)に一致しているから。

地球と火星とベルターが通商協定を結んで協調したとき、たしかに古の強国バビロンが崩れるように、地球を中心とする覇権も灰になったということなのかね。

けれども、惑星ラコニアの問題が残ったママ。おいおい、これで終わりになんてしないでくれよな。第6話が駆け足に過ぎていて、ちょっといやな予感がしているんだけど、お願いだから続きを作ってくださいよね。

さもなきゃ原作を読むしかないんだけど、翻訳されていないし。原文で読むの面倒だな...

PS:
ところでロシナンテ号の船名ロシナンテだけど、これってセルヴァンテスの『ドン・キホーテ』に登場する痩せた駄馬ロシナンテから取られたものなんだね。最近初めて知ったわ。
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