Iri17

The OA パートⅠのIri17のレビュー・感想・評価

The OA パートⅠ(2016年製作のドラマ)
5.0
ドラマは普段はレビュー書かないけど、この『The OA』は今まで観たどのドラマよりも素晴らしく、個人的には僕のベストだった『ツイン・ピークス』や『スキンズ』も抜いてしまったのではないかというレベルだった。だからちょっとまとめようと思う。

突然失踪した盲目の娘が自殺未遂を起こし7年ぶりに帰ってくる。しかも目が見えるようになって。マスコミや警察は事情を聞いても、話そうとしない。誘拐したのは何者か、なぜ目が見えるのか。彼女はネットを通じて人を集めて、自分の過去を語り、監禁された他の仲間たちの救出を手伝って欲しいと頼む。というのがあらすじ。

彼女の話は突拍子もなく、どこまで信じていいかわからない。でも集まった5人は彼女の話を聞きいるようになり、問題を抱えた彼ら自身も徐々に変わっていく。主人公の話は矛盾が多いし、主人公のいない場面まで回想している不思議なもので、最初は脚本の穴かと感じるが、このミスが最終話への伏線になっている。信じ難い事を疑わない5人はカルト的な集団心理に陥っているといえ、すごくブリット・マーリング的だ。

このドラマで描かれるのは信じる力だ。主演、脚本、プロデュースを務めたブリット・マーリングと監督のザル・バトマングリッジのコンビが今まで描いてきたのはカルトだった。『ザ・イースト』、『Sound of My Voice』ではカルトの恐怖や信じ合うことで得られる愛が描かれた。『The OA』には3つのカルトが登場する。主人公の元に集まった5人、主人公と共に集まった5人と誘拐犯、主人公の家族だ。彼らはそれぞれが問題を抱えているが、信じる事で変わっていくのだ。

全8話でカルトの誕生から消滅、信じたものの消滅のその先に現れる「神の御技」を描いている。特に最終話では驚愕の真実が明らかになるが、それを超越して主人公が真にOAとなる。人によってはこの展開はついていけないか、拍子抜けしてしまうかもしれない。また解釈は人によっていかようにも出来るし、1話〜7話が最終話への布石になっている。これはドラマというより8分割された映画とみるほうが正しい。終わり方はブリット・マーリング脚本、主演の『アナザー・プラネット』を観た方はそんな感じと思ってください。

デヴィッド・リンチのようなシュールレアリズム的な世界観が素晴らしく、SFであり、ドラマであり、サスペンスで、生と死、愛、信仰、宇宙についてのドラマ。カルトや狂信を断罪するのではなく、それによって起こされる奇跡を描いたブリット・マーリングの最高傑作だと思う。
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