梅田

マスター・オブ・ゼロ シーズン3の梅田のレビュー・感想・評価

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16mmフィルム撮影、スタンダードサイズ、固定カメラの長回し主体で、前シリーズまでの主人公デフ(アジズ・アンサリ)はほんの端役でしか登場せず、デニースとその恋人アリシアの二人を中心にしたラブストーリー。シーズン2までの軽妙でユーモラスなアプローチを完全に捨てて全く新しい作りになってるけど、そのあまりの完成度にまたしても驚愕させられてしまった。

全5話でトータル3時間半と、一つの「映画」としてこれ単独で観ても何ら差し支えない。というか、そういうつもりで作ってると思われる。
映画のよう、という意味ではやはりこの編集が本当にすごい。第4章、淡々と事態が進んでいく中でのアリシアの感情の揺れ動きが、あまりにもクリティカルに切り取られていて、観ていて平常心ではいられなかった。そしてそこから第5章への跳躍は、まさに映画的としか言いようがない時間の魔法。
カメラが動かない代わりに、画角の細部の作り込みも尋常じゃなく、大半の時間が費やされるデニースの邸宅のハイセンスさにもうっとりする。しかもその瀟酒さまでもが終盤のプロットに回収されていく構成も完璧というほかないし、いやマジで本当にすごい映像作品を観たという気がする。単純に観てて楽しかったのはシーズン2だけど、これはちょっと違うレイヤーで突出してた。
梅田

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